「職業能力評価基準」とは? 自社に合ったカスタマイズと活用のポイント

職業能力評価基準とは

「職業能力評価基準」とは、業種及び職種・職務別に、それぞれの仕事をこなすうえで必要とされる知識、技術・技能、そして成果につながる職務行動例(職務遂行能力)を、厚生労働省が整理し、2002年に公表したものです。2021年現在、業種に関わらず必要とされる経理や人事などの9職種に加え、電気機械器具製造業やホテル業、在宅介護業などをはじめとする56業種に対して、個別の評価基準が用意されています。

職業能力評価基準については、使い方のヒントとなる導入・活用マニュアルや、各業種に合わせたモデル評価シートなどのツールも公開されています。すべて厚生労働省の公式サイトからダウンロードし、無料で利用可能となっています。

参考)厚生労働省「職業能力評価基準」について

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/ability_skill/syokunou/index.html

職業能力評価基準の基本構成

職業能力評価基準では、仕事の内容を「職種」「職務」「能力ユニット」「能力細目」の4つに分けて整理しています。そのうえで、それぞれの職務を遂行する際に判断基準となる行動例や技術・技能と、前提となる知識を整理し、体系化しています。それぞれの項目が示す内容は、以下の説明の通りです。

1)職種 「営業」「商品開発」「加工」など、仕事の内容や性質が近しい「職務」をカテゴライズしたもの
2)職務 「機械加工」「溶接」「検査」など、各従業員が責任をもって取り組むべき範囲の仕事
3)能力ユニット 一つひとつの仕事を、効果的かつ効率的に行うために必要とされる能力を示したもの。「共通能力ユニット(職種に共通して求められる能力)」と、「選択能力ユニット(各職務を遂行するうえで求められる固有の能力)」の2種類から構成される
4)能力細目 能力ユニットで示される内容を、作業単位で細分化したもの

また上記4つの項目で仕事内容を表すにあたり、企業が個人に期待する責任・役割の範囲と、該当する業務の難易度によって、「レベル区分」(能力段階)も設定されています。

例)事務系職種の職業能力評価基準におけるレベル区分の目安

レベル レベル区分の目安 呼称イメージ
レベル1 担当者として、上司の指示、助言を踏まえて定例的業務を確実に遂行するために必要な能力水準。 「担当者」など
レベル2 グループやチームの中心メンバーとして、創意工夫を凝らして自主的な判断、改善、提案を行いながら、業務を遂行するために必要な能力水準。 「係長」「主任」など
レベル3 中小規模組織の責任者もしくは高度専門職として、上位方針を踏まえて管理運営、計画作成、業務遂行、問題解決等を行い、企業利益を創出する業務を遂行するために必要な能力水準。 「課長」「マネジャー」など
レベル4 大規模組織の責任者もしくは最高度の専門職として、広範かつ統合的な判断及び意思決定を行い、企業利益を先導・創造する業務を遂行するために必要な能力水準。 「本部長」「部長」など
※出典:厚生労働省 公式ホームページ「職業能力評価基準の構成」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07949.html

提供されているツール

厚生労働省では、この職業能力評価基準を企業が利用しやすいよう、人材育成システムのツールを無料で提供しています。自社に合ったツールを選び、導入・活用マニュアルと合わせて活用してみてください。ここでは、代表的な2つのツールをご紹介します。

1)キャリアマップ

職業能力評価基準で設定されている4段階のレベル区分に基づいた、キャリアマップが用意されています。それぞれの職種についた人はどのようなキャリアを重ねることが多いのか、標準的なキャリアアップの道筋と、各レベルをクリアするための目安となる年数が示されています。

例)電気通信工事業向けのキャリアマップ(一部)

※出典:厚生労働省 公式サイト

 

2)職業能力評価シート

各社員が職務遂行のための基準をクリアしているかどうかを評価することができる、チェック形式のシートが、それぞれの職種・レベル区分ごとに用意されています。

例)職種:営業/レベル4の職業能力評価シート(一部)

※出典:厚生労働省 公式サイト

職業能力評価基準を企業が活用することのメリット

企業が人材育成や採用活動に注力する際、その基準となる要件をすべてイチから整理し、キャリアマップやスキルマップ、評価のためのツールなどを自分たちで設計・運用しようとすると、専門知識が必要となるのはもちろんのこと、非常に多くの時間や労力がかかります。

そんなとき、公的な職業能力の判断基準である「職業能力評価基準」をベースとして活用することで、さまざまな企業活動を効率的に実施できるでしょう。そのまま導入するのではなく、自社に合わせてカスタマイズすることもできます。

1)人材育成/能力開発への活用

企業の中で部下の育成などを担うマネジャーや管理職の方は、各社員の能力・スキルについて現在地を確認し、さらにその力を伸ばすための基準として活用することができます。働く個人にとっても、自分自身の能力・スキルを客観的に把握するよい機会になるでしょう。

2)人事評価の基準

人事評価を行う場合、明確な基準があることが大変重要です。この職業能力評価基準を活用し、人事制度の見直しや、人事評価制度の整備を行うことも可能です。

3)採用への活用

社内にいる人員の能力・スキルを把握することによって、どんな能力・スキルを持つ社員が不足しているのかを明らかにし、適切な人材戦略を立てることが可能となります。

4)社内認定制度の構築

社内資格や、認定制度を新たに設ける場合、公的な基準として参照することができます。認定のための教材制作や、講義・講習内容の作成時も役立ちます。

推奨されている導入ステップ

この職業能力評価基準を自社内で導入するには、どのような段階を踏めばよいのでしょうか。厚生労働省は、以下4つの段階を経て導入を行うことを推奨しています。

1)目的を明らかにする

スキルマップの作成なども同様ですが、まずは何のために職業能力評価基準を導入するのか、その目的を明らかにします。

2)自社に通用する「職業能力評価基準」にアレンジ

前述のように、この職業能力評価基準は各企業に合わせてカスタマイズすることができます。一つひとつの項目を確認して、まずは必要ないものを削除しましょう。さらに不足している項目を追加し、場合によっては項目の組換えを行って、自社に最適化していきます。

3)レベル設定をする

一つの項目について経験年次ごとにレベルアップしていくなどわかりやすい段階を設定し、社員の誰もが納得できるものにします。

4)現場の意見を取り込む

導入・活用をしていく過程で、必ず運用している現場の意見に耳を傾けます。事前ヒアリングを行うのも効果的でしょう。出てきた意見をもとに、運用方法を修正していくことで活用が進みます。

自社内でカスタマイズを行う場合のチェックポイント

ただし、上記4つの段階をスムーズにクリアし、本当の意味で自社に合ったカスタマイズを行うのはそう簡単ではありません。職業能力評価基準のアレンジ及びレベル設定を行ううえで、特に注意して検討いただきたいポイントは以下の通りです。

1)項目の「粒度」は自社業務に合っているか?

職業能力評価基準に記載されている項目は、あくまでも一般的なものであり、すべての企業に当てはまるわけではありません。企業によっては分類やレベルが細かすぎるケースもあれば、さらに細かくしなければ目的が達成できないこともあります。項目を取捨選択する際は、必ず目的と照らし合わせて粒度を揃えることを意識してみてください。

2)個々の能力につけられた名称は適切か?

項目の粒度と同様に、名付けられた名称も自社に合わせて確認・変更しておきたいところです。その名称を聞いたとき、人によって言葉の理解やイメージに齟齬が生じてしまっては、基準として機能しません。名称に曖昧さがある場合は、きちんと定義を確認して周知することが重要です。

3)現場の社員が違和感なく使えるか?

カスタマイズした職業能力評価基準は、実際に活用できるかどうか、現場で必ずチェックする必要があります。例えば上司が部下の能力を評価し、記入する形で使用するならば、管理職/各部署のリーダーなどが違和感なく使えるかどうかを確認してみてください。粒度が細かすぎて評価が進まない、人によって解釈にバラつきが出るなど、違和感のサインがあれば見逃さずに改善していきましょう。

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まとめ:策定された基本項目をもとに、効率的な人材育成の仕組みづくりを

今回は、厚生労働省が公開する「職業能力評価基準」についてご紹介しました。こうした公的な評価基準を活用することによって、自社だけで人事評価の基準を策定したり、人材育成の仕組みをイチから構築したりする多くの労力をショートカットすることが可能となります。

しかし一方で、職業能力評価基準は、制度を導入することで、すべての効果を発揮するものではありません。スキルや能力がアップデートしたときは、情報を正しく更新し、常に最新の状態でを保つことで、始めて導入のメリットを感じられるでしょう。


多くの企業は、正しく情報を管理するためにスキルマップを使用しています。職業能力評価基準は、スキルマップを作成するためのベースとしても活用されています。自社に合った項目をスキルマップに落とし込み、運用を定着させることができれば、客観的な根拠に基づいた評価や人材育成に活用できるでしょう。

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