スキルマップとは?作り方の9ステップ・テンプレート・評価基準・職種別項目例・トヨタ自動車に学ぶ活用まで完全解説

スキルマップとは、業務で必要なスキルを洗い出し、各従業員の保有状況を一覧にした表(力量管理表)です。スキルの可視化・人材育成・人材配置の効率化を実現するツールとして、多くの企業が導入しています。本記事では、スキルマップの作り方9ステップ・無料エクセルテンプレート・評価基準の設計方法・職種別項目例・トヨタ活用事例までまとめて解説します。
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スキルマップ(力量管理表)とは
スキルマップとは、従業員スキルの現状を一覧で把握し、育成・配置・評価に活かすための管理表です。
スキルマップとは、「業務で必要なスキルを洗い出し、各従業員の持っているスキルを一覧にした表」のことです。組織内のスキルの状況を把握し、計画的な人材育成を図るために使われます。
スキルマップは、企業によっては力量表、力量管理表、技能マップと呼ぶこともあります。また、海外ではスキルマトリックス(Skills Matrix)という呼び方が一般的です。
企業の人材育成・能力開発の取り組み状況を調査した厚生労働省の「令和4年度能力開発基本調査」によると、正社員に対して計画的なOJTを実施している事業所は60.5%に上り、多くの企業が従業員の能力開発に取り組んでいることが分かります。このような計画的な人材育成を支えるツールとして、スキルマップの重要性が高まっていると言えます。
スキルマップを導入する3つの目的
スキルマップの導入目的は、スキルの可視化・人材育成・従業員モチベーション向上の3つです。
スキルや人材の見える化・可視化
部門やグループ単位でスキルマップを作ることで、経営者や管理者は組織内にどのようなスキルを持った人が何人いるのか、一覧で把握できるようになります。
スキルや人材の状況が可視化されるので、組織内で現在または将来的に不足するスキルが明確になり、組織としてどのようなスキルを強化または補充していくべきかが明らかになります。
人材育成
スキルマップを用いると、各従業員のスキルがどのレベルなのかが一目瞭然になります。従業員のスキルごとの達成状況が明確になりますので、不足している部分を補うような効果的な教育計画を作成できます。
従業員のモチベーションアップ
スキルマップを従業員に共有することによって、従業員の成長意欲やモチベーションの向上が期待できます。
- 自身に求められているスキル要件が明確になる。
- 自身のスキルの現状をパッと確認できることで、スキル向上への達成意欲が湧く。
- 他のメンバーのスキルの保有状況も確認でき、競争心が刺激される。
なお、スキルマップの従業員への共有としては、「職場に掲示する」「個別面談で見せる」といった方法がよく使われているようです。
スキルマップの7つのメリット
スキルマップを導入すると、スキルの可視化、人材育成、人材配置、評価の納得感向上など、さまざまな効果が期待できます。まずは、導入前と導入後で起こる代表的な変化を5つの観点で見てみましょう。
| スキルマップ 導入前 | スキルマップ 導入後 |
|---|---|
| 従業員のスキルレベルの把握が困難 | 従業員のスキルレベルが人目でわかる |
| 教育計画が従業員のレベルと不一致 | 従業員のレベルに合わせた教育計画が策定できる |
| 従業員のスキルレベルが把握できず、 効果的な人事配置が難しい | 従業員のスキルレベルが把握でき、 効果的な人材配置ができる |
| 従業員への評価が主観的になる | 従業員に公平な評価ができる |
| 求められるレベルが不明確なため、 モチベーションが上がらない | 求められるレベルが明確なので、 従業員のモチベーションが上がる |
以下では、スキルマップ導入によって得られる主なメリットを7つに分けて詳しく解説します。
スキルの把握とリスク対応
スキルマップを作ると従業員のスキルを可視化でき、適切な人材配置を行うことができます。
たとえば、部署ごとの従業員数が多い傾向にあるラインオペレーターや現場作業員の場合、必要なスキルが多岐にわたっていたり、公的資格が必要な場合があります。このような場合には人事権を持つ人が従業員全てのスキルを把握するのは難しいため、スキルマップは従業員のスキル把握に役立ちます。
さらに、重要かつ専門的な知識が必要なスキルに対し、そのスキルの保有状況をパッとわかるようにします。このことで「限られた従業員しかそのスキルを持っていなかった」といったような潜在的なリスクにあらかじめ気付くことができます。
人材の流動化が進む現在、従業員がいつ転職するかは不透明です。また、転職以外にも急な体調不良や育児休暇の取得など、必要なスキルを保有する人材が不在となるリスクは常に存在しています。スキルマップによって従業員のスキルを適切に管理できていれば、転職・休職・退職等によって不足するスキルを事前に把握でき、育成・配置・採用などの対応策をあらかじめ準備しておくことができます。
計画的な人材育成と技術伝承
従業員のスキルレベルを把握するとスキルの不足部分が明確になり、不足部分への集中的な教育が実現できます。さらにスキルマップと一緒に教育計画も作れば、従業員に求めているレベルへと計画的に教育を行えます。
また、従業員全体に不足している分野に対しては、個別に教育を行うのではなく講師を呼んでまとめて教育を行うなど効率的な教育計画作成も可能になります。
スキルマップによって可視化されたスキル状況を参考にすることで、今後も成長を続けるために自社にどのようなスキルが必要かを明確に判断することができます。
特に「技術・技能伝承」の観点では、今後どのスキルが失われる可能性があり、誰にそのスキルを習得させればよいかをはっきりさせることができます。スキルマップによって今後必要となるスキルを特定し、そのスキルを習得させるために必要な教育・研修を運用することで、安定的な事業運営が期待できます。
効率的な人材配置
従業員が保有するスキルの把握は、効率的な人事配置にも役立ちます。特に有資格者の配置が必須となる業界の業務では、従業員の資格保有状況が一覧できるスキルマップは効率的な人材配置に大いに貢献します。
これまで上長の勘と経験、記憶に頼った配置が客観的なスキルデータを基に行えるようになります。また、スキルマップから不足している人材が把握できるため、採用の際などにも役立ちます。
公平な評価
スキルマップは客観的で公平な評価の助けにもなります。スキルの評価レベルは「1〜4」などと明確に決まっています。そのため、評価を行う人の主観ではなく客観的な評価が可能となります。
また、評価を行う人も、前年の評価や他の従業員の評価がパッと参照できるので評価に悩む時間も減るでしょう。公平な評価は職場風土の向上にもつながります。
モチベーションアップ
スキルマップを導入することで、従業員は、評価の基準となる項目や自分のスキルレベルを簡単に把握できるようになります。自分の現状と求められているレベルが明確になり、目指すべき方向性もはっきりします。モチベーションもアップするでしょう。
個別面談の際にスキルが向上した部分や今後伸ばしていく部分について、スキルマップを活用した具体的な指導も可能です。
また、スキルマップで会社のスキル状況が可視化されることで、先輩や同期との差も把握できるようになるため、スキルアップを目指してモチベーションを高める従業員も増えるでしょう。ただし、外部から競争意識をあおるようなスキルマップの活用方法は望ましくありませんので、十分に注意しましょう。
ISOなどの監査対応
ISO 9001などの国際マネジメント規格では力量管理が求められています。監査の際には、スキルマップを用いて力量管理を行っていることを審査員にきちんと示しましょう。
業務の効率化
スキルマップは人材育成に関するあらゆる場面で活用できるため、様々な人事業務の効率化につながります。
- 人事配置
- 採用活動
- 教育計画
- 人事評価
- ISO 9001などの定期審査
スキルマップの作り方【9ステップ】
スキルマップは、目的の明確化から運用開始まで9つのステップで作成できます。 スキルマップを作るのは部門や部署の所属長(上司)である場合が多いと言えます。職場の上司が、部下がどのようなスキルをどのレベルで持っているかを把握・評価した上で作成します。しかし場合によっては、部下自らが作成することもあります。この場合も上司が記載内容を確認します。
ステップ1:スキルマップの目的を明確にする
スキルマップを導入する前に、まずはスキルマップ導入の目的を明確にしておきましょう。
スキルマップの導入や運用には、ある程度の工数がかかります。目的が明確に定まっていない状態でスキルマップの導入を進めても、十分な効果が得られずに工数だけを浪費してしまうでしょう。
まずは「なぜスキルマップを導入するのか」「スキルマップでどのような課題を解決したいのか」といったスキルマップを導入する目的を明確にし、関係者で共有することが重要です。目的が関係者と共有できていれば、関係者の協力が得やすくなり調整がスムーズに進みます。
ステップ2:スキル項目を洗い出す
スキルマップの導入目的が明確になり関係者との共有もできたら、次にスキルマップで管理すべきスキル項目の洗い出しを行います。管理すべきスキルは業務ごとに異なるため、実際の業務の流れに則して抜け漏れなく洗い出す必要があります。
なお、スキル項目を洗い出す際には、「そのスキルが自社の事業にとって必要なのか」「本当に業務に密接にかかわるスキルなのか」といった観点から、個人の主観を排して行うことが重要です。現場の従業員によくヒアリングして実際の業務フロー、マニュアル、状況を参考にすると良いでしょう。
ステップ3:スキル体系の分類を決める
スキル項目の洗い出しを終えたら、それぞれのスキルをどのような体系に分類するのかを決めましょう。スキルを体系に分類することで、スキルとスキルの関連性が明確になり、スキルマップを運用しやすくなります。
要素や技術、製品カテゴリーごとに分類することが、スキル体系への分類方法としては一般的です。他には、担当ごとの業務項目や作業項目によって分類しておくと、業種ごとにスキルを管理したい場合に運用しやすいでしょう。
ステップ4:スキル項目の階層を決定する
抽出・分類したスキル項目は、階層構造を決めておくとさらに管理しやすくなります。項目ごとの関連性の強弱がよりはっきりし、「次にどのスキルを目指すべきなのか」「代用できるスキルは何か」と判断することが可能となります。
階層の数に決まりはありませんが、階層数があまり多いと複雑になり管理しにくくなってしまいます。項目に応じて2〜3階層に分けるといいでしょう。
ステップ5:スキルの粒度を決める
業務に紐づくスキル項目の場合には、作業レベルまでスキルを分解することで細かな粒度で管理することが可能です。しかし、粒度が細かすぎると複雑になり、管理が難しくなります。一方で、スキルの粒度が粗すぎると従業員ごとのスキルの差を把握できなくなり、スキルマップを十分に活かすことができません。
たとえば、表計算ソフトExcelに関するスキル体系は、以下のように表現できます。

どちらも同じExcelに関するスキル項目だが、粒度が細かすぎると管理コストが増大する。職場の特性に合わせた粒度を選ぶことが重要。
いかがでしょうか? どちらも同じExcelに関するスキル項目ですが、例2は細かすぎると感じた方が多いのではないでしょうか。人によっては、例1でも細かいと感じたかもしれません。どちらかが正解・不正解というわけではありませんが、スキルの粒度は、職場の特性やスキル管理の必要性に応じて決めていくほうがよいでしょう。
ステップ6:スキル名を決定する
階層や粒度を決定したスキルは、判別しやすいスキル名称を決定します。「給与を計算できる」「部材の強度を測定できる」のように文章で表現する場合もありますが、スキルマップ上での管理や全社的なスキル項目の集計を踏まえ、「給与計算」「部材の強度測定」のように単語で表現するといいでしょう。
なお、スキルとは、訓練によって習得できる「能力・技能・技術」のことを意味します。つまり一般的には、「○○○をできる」と表現ができるものをスキルと呼びます。しかし、スキルマップで用いるスキル体系では、定義通りのスキルだけにこだわらずに、厳密な意味では「スキル」には含まれない「知識」や「資格」もスキル項目として管理しても問題ありません。
【スキルの定義について補足】
「給与計算」「部材の強度測定」といったスキル名は、そのスキルに関連する業務に関係のある従業員ならその内容をすぐに想像できます。一方で、関係のない従業員から見るとどのようなスキルなのかはわかりません。
また、「部材の強度測定」というスキルを指導員Aが評価した場合と指導員Bが評価した場合では、その評価にバラツキが生じる可能性があります。
このように、スキルの解釈や評価のバラツキを避けるために、必要に応じてスキルの概要や評価ポイントなどを記載して、補足説明を加えると良いでしょう。
| 1階層目: 業務項目 | 2階層目: 作業項目 | 概要 |
|---|---|---|
| 加工工程 | 素材切断 | ●●を●●して、●●素材を切断する |
| ベース加工 | …… | |
| 加工用プログラム編集 | …… | |
| ︙ | …… | |
| 組立工程 | 型番変更 | …… |
| ワーク脱着 | …… | |
| 部材取付け | …… | |
| ︙ | …… |
ステップ7:スキルの評価基準・評価段階を決定する
管理対象のスキル項目の分類方法や粒度が決まったら、それぞれのスキル項目の「評価基準・評価段階」を決定します。スキルの評価基準を設定しておくことで、スキルの習熟度や次に目指すレベルが明らかになり、スキルマップを有効活用できます。
評価基準の具体的な設計方法は、次のセクション「スキルマップの評価基準の設計方法」で詳しく解説します。
ステップ8:スキルマップを作る【厚労省テンプレート付】
スキルマップで管理したいスキルの評価基準や評価段階を決定したら、これまで準備してきた情報を織り込んだスキルマップを作成します。
スキルマップを1から作り上げるのは大変難しいため、厚生労働省が公開している業種別のテンプレートを活用すると良いでしょう。テンプレートに準備した情報を反映させることで、自社の状況に合わせたスキルマップを作成できます。
スキルマップは、実際に運用してから初めて分かることもあります。そのため、一通り完成したら運用を始めましょう。運用前に細部までこだわりすぎると、運用開始が遅れてしまいます。その結果、運用後のフィードバックを反映させるタイミングも遅れてしまいます。バランスを取って運用することが重要です。
>厚生労働省のテンプレート「職業能力評価シート」をダウンロードする
ステップ9:スキルマップの運用とブラッシュアップ
スキルマップが作成できたら、実際に運用を開始します。
最初から全社に展開すると、運用に関する質疑対応や運用がうまくいかなかった場合の修正対応が大変になります。そこで、いくつかの部門を対象にテスト運用を行い、そこで得られた意見や質問をベースにスキルマップ自体をブラッシュアップしてから全社展開すると良いでしょう。
なお、全社運用後に共通した質問が想定される場合には、事前にQ&Aリストなどを準備しておくと運用後の管理側の負担を低減できます。
ブラッシュアップの観点としては、ユーザーインターフェースやスキル項目の増減、スキルマップ自体のフォーマットなどさまざまな観点があります。また、Q&Aリストは常に最新の状態に更新しておくことが重要です。
スキルマップのエクセルテンプレート【無料】
スキルマップは厚生労働省やIPAの無料テンプレートをベースに作成するのが最も効率的です。
厚生労働省「職業能力評価シート」
厚生労働省のホームページでは、事務系職種やねじ製造業などの16業種についてそれぞれキャリアマップ、職業能力評価シート及び導入・活用マニュアルが公開されています。
たとえばねじ製造業では、職業能力をレベル1〜4まで区分けしています。それぞれのレベルの目安年数などが書かれたキャリアマップで、キャリアアップのイメージをつかみます。職業能力評価シートはExcelで公開されていますので、自社の業務にあった評価項目に編集して使用することができます。
また、これらのキャリアマップ、職業能力評価シートの詳細な活用方法が書かれた32ページの導入・活用マニュアルがあります。かなり充実したコンテンツなので、スキルマップの導入を目指す方はぜひ一度ご覧ください。
独立行政法人情報処理推進機構『情報システムユーザースキル標準(UISS)』
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が策定した「情報システムユーザースキル標準(UISS)」は、IT人材用にスキルマップを作る際に必要となる情報がまとめられています。IT人材用のスキルマップを作りたいときにはぜひこちらを参考にしてください。
→独立行政法人情報処理推進機構『情報システムユーザースキル標準(UISS)』をダウンロードする
スキルマップの評価基準の設計方法
評価基準は「誰が評価しても同じ結果になる」客観性が最重要で、数値や行動ベースで設計します。
評価段階の考え方
スキルマップの評価基準を設定しておくことで、スキルの習熟度や次に目指すレベルが明らかになり、スキルマップを有効活用できます。
たとえば、「資格」に近しいスキル項目では「○:持っている/×:持っていない」などとスキルの有無だけで評価できます。しかし、単にスキル保有の有無だけでは判別できないスキルの場合には、以下の表に記載したレベル1〜4のように、いくつかの段階を持たせるとよいでしょう。
| レベル | レベル基準 |
|---|---|
| レベル4 | 指導をできる |
| レベル3 | 一人で実施できる |
| レベル2 | 指導を受けながら実施できる |
| レベル1 | 補助をできる |
評価段階をいくつにするのが望ましいかは、対象とするスキル項目やスキルマップの目的によって異なるため、一概に何段階が良いとは言えません。評価段階を細かくすればするほど当然細かなスキル管理は可能になりますが、一方で管理が煩雑になるため運用の手間が増えてしまいます。スキルマップの管理・メンテナンスにかかる負荷なども考慮して、自社にとって最も適当な評価段階の数を決定すると良いでしょう。
| 表示パターン | 例 |
|---|---|
| 数字 | 1/2/3/4 |
| アルファベット | D/C/B/A |
| 図形 | ◎/◯/△/✕ |
曖昧な評価基準の例
評価基準を曖昧に設定すると、評価者によって判断基準がばらつき、評価の公平性が保てなくなります。以下は曖昧な基準の典型例です。
- レベル1:基本的なことができる
- レベル2:応用的なことができる
- レベル3:上級者レベル
客観的な評価基準の例
評価者が変わっても同じ結果になるよう、「作業時間」「指導可否」「品質基準のクリア」など、観察・測定できる行動ベースの基準を設定しましょう。
- レベル1:マニュアルを参照しながら標準時間内で作業完了できる
- レベル2:マニュアルなしで標準時間内で作業完了でき、品質基準をクリアできる
- レベル3:他者に指導でき、改善提案を行える
客観的な基準を設定することが、スキルマップ運用の公平性と信頼性の土台となります。評価基準には「作業時間○○分以内」などの数値基準を積極的に活用しましょう。
【職種別】スキルマップの項目例
職種ごとにスキル項目は大きく異なるため、業種・職種に合わせた項目設計が必要です。
製造業
製造業では、ISO 9001が求める力量管理への対応もあり、スキルマップの導入が最も進んでいる業種のひとつです。製造業のスキルマップでは、機械操作・品質管理・安全管理など現場に直結する技能スキルを中心に設計するのが一般的です。また、多能工化を目指す企業では、複数工程にまたがるスキル項目を設けて従業員の横断的な習熟状況を可視化するケースも多く見られます。
例:生産技術職の場合
生産技術職は、製品の製造工程を設計・改善することを主な業務とする職種です。機械・設備に関する専門知識と現場改善の実践力が特に求められます。生産技術職のスキル項目の例としては下記があります。
- 機械・設備の操作および保全
- 製造工程の設計・改善(カイゼン活動)
- 品質管理・検査技術
- 設備トラブルの原因分析と対応
営業職
営業職のスキルは言語化しにくい項目が多いと思われる方もいるかもしれません。しかしこういった言語化しにくいスキルを言語化し評価を行っていくことで、従業員が自分の長所や短所に気付けますのでモチベーションアップにつながります。
営業職のスキル項目の例としては下記があります。
- 企業倫理の遵守、倫理的問題発生時の解決能力
- 課題設定・解決能力
- 顧客との関係構築能力
- 交渉力
- プレゼンテーション能力
- ヒアリング能力
ITエンジニア
ITエンジニアはプログラミング能力が必須ですが、顧客対応も求められる職種です。プログラミング能力だけではなく広範なスキルをITエンジニアのスキルマップには登録するとよいでしょう。ITエンジニアの項目例は以下です。
- テスト(デバック)
- プログラミング能力
- 設計能力
- 要件定義
- リーダーシップ
- 顧客対応力
- マネジメント力
スキルマップ導入でよくある失敗例3つと対策
スキルマップは項目の肥大化・評価基準の曖昧さ・現場の温度差の3つが主な失敗原因です。
スキルマップの導入は多くのメリットをもたらしますが、導入された現場では様々な課題を生むことがあります。ここでは、スキルマップを導入する際に陥りがちな失敗例と、それぞれに対する対策をご紹介します。
失敗例①:項目を増やし過ぎて更新が滞る
従業員の持つスキルを詳細に把握したいという思いからスキル項目を細かく設定しすぎてしまうことがあります。網羅性を意識すればするほどスキルは解像度高く管理できる一方で、評価や更新に膨大な時間がかかり、担当者の負担が増大して運用が継続できなくなってしまうリスクがあります。
そのため、担当者の運用のしやすさを考慮して、他部署との共通性も意識しながらバランスよく項目を設定するようにします。
失敗例②:評価基準が曖昧で属人的になる
評価基準を「レベル1:基本ができる」「レベル2:応用ができる」といった抽象的な表現で設定すると、評価者によって判断基準にばらつきが生じて、評価の公平性や一貫性が保てなくなる恐れがあります。そのため、評価基準には「作業時間○○分以内」など数値基準を併用するようにします。具体的な設計方法は前の「スキルマップの評価基準の設計方法」のセクションをご参照ください。
失敗例③:従業員の間で温度差が生じる
スキルマップの導入はスキルマネジメントをはじめる第一歩です。しかし、スキルマップを活用したスキルマネジメントに対して従業員の間で温度差が生じることもよく見られる事象です。スキルマップの運用は現場の従業員に入力作業の手間などの負担を生じさせます。それを負担と思う従業員とスキルマップの活用によって効果的な人材配置や評価を期待する従業員との間に温度差が生まれるのです。
この温度差を解消するには、スキルマップの運用に積極的でない従業員に対してスキルマップによって得られるメリットを説明することが効果的です。
スキルマップの活用方法
スキルマップは作って終わりでなく、定期評価・フィードバック・育成計画への活用が本来の価値です。
[企業側]評価結果のフィードバックと能力開発計画の作成
スキルマップが作成できたら、担当者や上司は定期的な評価を行いましょう。評価を行った後は面談などで評価結果を従業員にフィードバックすることが望ましいです。
教育計画作成の場面では、スキルマップを用いて不足しているスキルを補うような教育計画を作りましょう。なお、部門を横断した不足部分の分析には、クラウドサービスを利用すると簡単に分析できます。
[従業員側]目標の見える化
従業員は、「現在の評価」「前年から評価の上がったスキル」「今後評価を上げなければいけないスキル」を、スキルマップを見ながらパッと把握することができます。自身の目標を明確に持つことで有意義な教育を受けることができるでしょう。従業員側からスキルマップを用いて、自身の今後伸ばしていきたいスキルなどを上司に説明できれば高評価にもつながります。
ISO9001の力量管理とスキルマップ
ISO9001はスキルマップを用いた力量管理の実施を要求事項として定めています。
国際的な品質マネジメント規格であるISO 9001の要求事項では従業員の力量管理が求められています。力量管理では従業員が業務を行うのに必要なスキルを明確にすること、スキルを得るための教育計画を作ること、教育計画が実施されスキルを得ていることが必要です。
スキルマップは組織の不足しているスキルが分かるため、教育計画の作成などに非常に役立ちます。
ISO9001など品質マネジメント規格の力量管理をシステム化したい方は、SkillnoteのQMS力量管理活用シーンをご覧ください。
トヨタ自動車に学ぶスキルマップ活用
トヨタ自動車はスキルマップを多能工化推進の基盤として活用し、品質の安定と生産性向上を実現した代表例です。
トヨタ自動車
トヨタ自動車株式会社では、以前から従業員の「多能工化(マルチタスク化)」を進めるためにスキルマップを活用しています。
多能工とは1人で複数の幅広い仕事ができる作業者のことです。多能工化した従業員には複数のスキルの必要となる業務を任せることができるため生産性が向上します。
トヨタにおける多能工化の考え方は大野耐一氏(元トヨタ自動車工業副社長)によって生み出されたと言われています。それまでの製造業では1人の作業者が1台の機械を作業することが一般的で、作業は属人化している状況でした。しかし、トヨタによる多能工化によって生産性が向上した結果、製造業を中心に従業員の多能工化の導入が進められてきました。
トヨタにおける「多能工化」の推進は、現在では「トヨタ式生産方式」と呼ばれ、「スキルマップ」活用の成功例として知られています。トヨタ式生産方式では、スキルマップを活用して従業員のスキル状況を可視化し、不足スキルを洗い出します。これにより「不足スキル」に対して従業員に最適な教育を行えるようになるため、スキル情報をベースにした効率的な人材育成が実現できます。
スキルマップを活用した多能工化の推進により、製品品質のばらつきを抑制でき、品質を高いレベルで安定した生産体制を構築できます。
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スキルマップの導入・運用に課題を感じていませんか?
Skillnoteでは、製造業を中心に250社以上がスキルマップをシステムで自動化しています。
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よくある質問
- スキルマップとは何ですか?
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スキルマップとは、「業務で必要なスキルを洗い出し、各従業員の持っているスキルを一覧にした表」のことです。組織内のスキルの状況を把握し、計画的な人材育成を図るために使われます。スキルマップは、企業によっては力量表、力量管理表、技能マップと呼ぶこともあります。また、海外ではスキルマトリックス(Skills Matrix)という呼び方が一般的です。
- スキルマップの作り方を教えてください
-
スキルマップは以下の9ステップで作成できます。
①目的の明確化
②スキル項目の洗い出し
③スキル体系の分類
④スキル項目の階層決定
⑤スキルの粒度決定
⑥スキル名の決定
⑦評価基準・評価段階の決定
⑧スキルマップの作成
⑨運用とブラッシュアップ。
詳しくは本記事の「スキルマップの作り方【9ステップ】」をご覧ください。 - 評価段階は何段階が適切ですか?
-
4段階が最も多く採用されています。
例として「レベル1:補助が必要な状態 / レベル2:一人で作業完了できる / レベル3:他者への指導ができる / レベル4:組織全体をリードできる」といった構成が運用しやすいでしょう。
自社のスキルマップの目的や対象スキルに合わせて段階数を決定することをおすすめします。 - スキルマップはExcel(エクセル)で管理できますか?
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少人数・単一部署であればExcelで十分に運用できます。ただし、組織が大きくなるにつれて「部門横断での分析が困難」「更新漏れ・バージョン管理の問題」が発生しやすくなります。社員数が増えてきた段階や、全社横断でスキルを分析したいケースでは、クラウド型のスキル管理システムの導入が推奨されます。
- スキルマップは誰が作りますか?
-
スキルマップを作るのは部門・部署の所属長(上司)である場合が多いです。職場の上司が、部下がどのようなスキルをどのレベルで持っているかを把握・評価した上で作成します。場合によっては部下自らが作成し、上司が確認・承認するケースもあります。
まとめ
スキルマップは、従業員のスキルを可視化し、人材育成・配置・評価・ISO対応まで幅広く活用できるツールです。本記事で解説した9ステップを参考に、自社の目的に合ったスキルマップを作成してみてください。
Excelでの運用に限界を感じてきた場合や、スキル情報を組織全体で一元管理したい場合は、クラウド型のスキル管理システムの活用も選択肢に入れてみましょう。
スキルマップの導入・運用に課題を感じていませんか?
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執筆者
スキルマネジメントMagazine編集部
スキルマネジメントMagazineは、製造業における業務に関する基礎知識から人材育成・人材活用を促進するスキルマネジメントについて発信する専門メディアです。Skillnote が運営し、数多くの製造業における人材育成・力量管理の支援を通じて蓄積してきたノウハウをもとに発信しています。

執筆者
スキルマネジメントMagazine編集部
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