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スキル管理とは? 目的・方法とスキルマップの活用

スキル管理とは?

企業が事業を継続し存続し続けるためには、事業を行う際に必要なスキルを従業員が保有していなくてはなりません。自社の従業員がどのようなスキルを保有しているか可視化するためには、スキル管理の取り組みが効果的です。

従業員の保有するスキルを適切に管理すれば大きな事業成果につながります。そのため、スキル管理は企業にとって重要な取り組みと言えます。 この記事では、スキル管理の概要やスキル管理が重視される理由、スキル管理を行う際に重要な役割を担うスキルマップについて解説します。

スキル見える化

スキル管理とは?

スキル管理とは、「自社に所属する従業員が保有するスキルを可視化し、社内で共有できる情報として集約・活用できるようにすること」です。一般的には、取得済みで現在保有している資格がスキル管理の対象となりますが、事業展開を想定した際に将来的に必要となるスキルも管理対象とすることがあります。

スキル管理によって社内で共有されたスキル情報は、新しいプロジェクトへのアサインや人員配置、成績評価、人事関連の業務などに活用できます。

スキルとは

そもそもスキルとは、「技能」や「技術」などの能力に関する意味合いを持つ言葉です。技能や技術の中でも特に、「教育や訓練を経て後天的に取得した能力」をさします。

一方で、ビジネスやスキル管理におけるスキルの定義は、一般的なスキルの意味合いよりも少し広く捉えておく必要があります。例えば、「仕事を進めるために必要な能力」や「保有していることで仕事を効率的に進められる技術」などが、ビジネスやスキル管理におけるスキルの意味合いです。

なお、仕事に活用できるものであれば、後天的に取得した能力だけではなく個人の特性までを含めて「スキル」と捉える場合もあります。

スキルの種類:テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキル

「スキル」の分類は、ヒューマンスキルやコミュニケーションスキルなどさまざまです。一例として、ロバート・L・カッツが「カッツ・モデル」として提唱した、「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」について紹介します。

スキルの種類

関連記事:人材管理における「スキル」の意味、管理職に必要なスキルの種類について解説

スキル管理とタレントマネジメントの関係

ここで、スキル管理とタレントマネジメントの関係について紹介します。

タレントマネジメントは、従業員が持つタレント(才能・資質・能力など)を経営資源と捉え、それを有効活用することで従業員個人や組織の成果を最大化し、その結果として経営目標の達成を目指す考え方です。

効果的なタレントマネジメントを行うためには、マネジメント対象の経営資源である従業員のスキル管理ができていることが、前提条件であると言えます。

つまり、タレントマネジメントとスキル管理は、目的と手段の関係にあるということです。タレントマネジメントを実現するためにはスキル管理が必要不可欠であり、スキル管理をうまく行うことができれば効果的なタレントマネジメントの実現にも大きく貢献します。

タレントマネジメントについて、より詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

関連記事:タレントマネジメントとは? 目的やメリット、方法について解説

スキル管理と人的資本経営・開示の関係

スキル管理は、タレントマネジメントだけでなく人的資本経営を進める上でも重要視される取り組みです。人的資本経営とは、人材を資本として捉えその価値を最大限に引き出すことで、企業価値向上につなげるという経営の考え方のひとつです。

関連記事:人的資本経営とは? 注目を集める理由、実践の方法、メリット

国際規格であるISO30414で定義されているように、今日の企業経営では人的資本開示も重要視されています。そのため、スキル管理によって自社が保有するスキルを整理しておくことは、対外的な説明性の確保にもつながります。

関連記事:ISO30414とは? 注目される背景、取得のメリット、11領域58指標、取得企業や取得の方法

スキル管理の重要性

ここまで紹介してきたように、スキル管理の目的は、従業員のスキルを管理することだけに留まりません。タレントマネジメントや人的資本経営・開示などとの関係により、スキル管理は社内外に大きな影響を与えます。ここでは、スキル管理がなぜ重要なのかを紹介します。

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組織としてのスキル総量の把握

スキル管理を行えば、自社に所属する個人および社内の各組織がどのスキルをどの程度保有しているのかを把握でき、企業の持つスキル総量を把握できます。

スキルの総量が把握できれば、自社が現在取り組んでいる事業や今後取り組む予定のある事業を全うするために必要なスキルがあるかどうかを判断することが可能になります。

また、スキル管理を行いスキル総量が把握できれば、ISO30414における11項目のうち、「スキルと能力」に関する項目を容易に示せます。

事業継続・事業開発に必要なスキルの維持・管理

既存事業を継続していくためには、継続に必要なスキルを保有していることが必要不可欠です。もし不足しているスキルがあれば、外部への委託や必要なスキルを持った人材を新たに採用、もしくは社内で育成する必要があります。

また、新たに事業開発を行う際には、事業開発のために必要なスキルを自社が保有しているかどうかの確認などにも活用できます。

スキル観点での最適な人材配置

適切な人材配置を行うことで遂行できる業務の種類や量が増え、業績の向上に大きく寄与します。しかし、誰がどのようなスキルを所持しているか管理できていない状態では、最適な人材配置はかないません。

従業員が保有するスキルを管理・共有できていれば、監督する事業所や部署はもちろん、他事業所や他部署などの人材も含めて最適な人材配置を実現できます。

従業員の育成計画の策定と推進

スキル管理の実施は、従業員の育成面でも大きな効果が期待できます。各従業員がどのような能力を身につけていくべきかどうかは、担当業務や従業員の希望、事業展開など、多岐にわたる要素が影響を与えます。

スキル管理を行うことで、企業は「いつまでに」「どの程度のレベルで」「どのようなスキルを」「誰が」身につける必要があるかを明らかにし、教育計画を立案・実施することが可能となります。また、スキル管理の中で教育計画も合わせて管理すれば、進捗管理も効率化できます。

異動・組織再編時のスムーズなスキル情報共有

スキル管理は、組織の再編や異動にも効果的と言えます。

スキル管理を行っていれば、組織再編や異動のタイミングで個人の主観によらない客観的なスキル情報をスムーズに共有して配置を実施、さらには業務分担や育成計画を速やかに構築することができます。

従業員のモチベーション向上

スキル管理によって組織や個人の持つ保有スキルを可視化して育成計画を立てておくことは、従業員のモチベーション向上につながります。

また、従業員の教育計画を可視化することで、従業員は新たなスキルを身につけることになります。これにより、従業員はさらなるレベルアップを目指してモチベーション高く業務に励むことになるでしょう。

次世代へのスキル継承

事業継続に必要不可欠なスキルを保有した従業員が、半永久的に企業に所属し続けるわけではありません。定年退職や転職など、さまざまな要因でいなくなってしまうことはいまや一般的と言えます。

このような状況に備えるためにも次世代へのスキル継承が必要ですが、スキル管理はスキル継承にも効果的です。

スキル管理によって可視化されたスキルの中から継承すべきスキル、そのスキルを次世代に向けて教える従業員、さらにはそのスキルを継承すべき従業員を選定することが簡単に行えます。また、スキルの継承が順調に進んでいるかどうかの可視化も実現できます。

06. 計画的な技能・技術伝承

スキル管理の難しさ・課題

スキル管理が重要であるとは感じていても、実際にはうまく取り組めていない企業も多いのではないでしょうか?

そこで、スキル管理がうまくいかない理由や、スキル管理の難しさ、課題について確認します。

管理項目・管理方法がわからない

スキル管理で管理すべきスキルは、すべての組織で共通しているわけではありません。スキル管理に取り組む企業の中には、自社が管理すべきスキルを明確化できずに、対象となるスキルを適切に選択できないことがあります。

また、スキル管理をエクセルで行う場合「スキルの習得状況や習得計画をどのように表記するか」「管理情報の更新はどのようなタイミングで更新するか」といったルールの決定・運用に難しさを感じることも多いでしょう。

このように、いざスキル管理を始めようとしても、スタートをする前に管理項目や方法を決められずに躓いてしまうことがあります。

スキル情報の更新がされずに情報が古い

スキル管理に活用できる従業員の保有スキルを整理しても、保有スキル状況を更新できずに最新の状態を維持できない場合があります。集約・整理した情報は、できれば半年、長くても一年ごとに更新することが望ましいです。

しかし、情報を更新する際のルールが決まっていないことで、適切に更新されない場合があります。スキル管理を行っていても、共有されている情報が古ければせっかく可視化されたスキル情報も活用されなくなってしまうでしょう。

管理した情報が共有・活用されない

苦労して集約・整理した情報が共有されておらず、活用方法が周知されていない状態ではスキル管理によって成果を生むことはできません。

スキル情報を共有する際には、管理している情報をどう活用するかも周知して、スキル管理の重要性を理解してもらうことが重要です。

スキル管理の方法

ここまで紹介したように、スキル管理に期待される役割は幅広く、管理対象の情報も多岐にわたります。効果的・効率的にスキル管理を実現する方法として、スキルマップの活用に注目が集まっています。

スキルマップとは?

そもそもスキルマップとは、スキル管理に必要な情報を集約し可視化したもので、従業員が保有しているスキルやそのレベルを可視化できるツールです。

スキルマップは、その有用性からすでに多くの企業で採用されています。企業によっては、力量管理表や技能マップ、スキルマトリックスと呼ぶこともあります。

スキルマップの内容は、すべての企業・組織で敷衍できるような画一的なものではありません。単に保有スキルの有無だけを判別するようなシンプルなものから、スキルをレベル別に可視化するもの。管理するスキル情報も現状の情報に限定したものから今後の計画を含んだものまでさまざまです。

スキル管理を最適化するスキルマップの作成や運用に関する重要なポイントを以下の記事で紹介しています。

関連記事:【Excelテンプレートあり】スキルマップとは? 作り方、手順・項目例、目的、活用方法、テンプレ

スキルマップは定期的に更新する

従業員は、日々新たな業務経験を積み重ね、業務に関するさまざまな教育を受講しています。その過程でスキルを更新し続けており、スキルマップは古くなり続けますおのため、経営や組織に関わる判断を下す際に参考にするスキルマップは、常に最新の状態に更新しておくことが望ましいと言えます。

スキルマップの更新を現場に任せるのも良いですが、通常業務の負荷が高い状況であれば更新する余裕がない場合おあります。

そのため、スキルマップの更新タイミングは企業全体で決め、更新がうまくできていない場合には適切なフォローを行う体制を構築するようにしましょう。更新タイミングの一例としては、組織編成や異動の前後、評価面談の前後など、スキル管理に関連性が高く、定期的に行われる業務と紐づけておくと良いでしょう。

管理するスキルは業種・職種によって調整する

スキルマップで管理すべきスキルの種類は、同一企業内であったとしても業種・職種によって異なります。候補となるスキルのすべてを網羅するスキルマップを作成し、全社的に運用することもできますが、管理する必要のない項目まで更新するのは非効率です。

スキルマップで管理するスキルを、所属する組織や異動の対象となるような関連組織の業務で使用するスキルに絞れば、スキルマップの更新に必要以上に時間をかけずに済みます。また、管理対象となるスキルの項目は、スキルマップを更新するタイミングで見直すと効果を最大化できるでしょう。

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スキル管理において管理すべきポイント

スキル管理を行う際には、以下のようなポイント・項目を考慮する必要があります。

業務で必要とされるスキルの棚卸

管理すべきスキルを抽出するためには、業務に欠かせないスキルを棚卸することが大切です。棚卸したスキルは、新しい事業の開発や既存事業の継続にも直結する内容のため、細かく管理する必要があります。

管理対象となるスキルには、さまざまな業種に共通する一般的なスキルもあれば、業種ごとに必要とされる専門的なスキルもあります。画一的な管理ではなく、組織ごとに管理対象のスキルを調整することが重要です。

業務経験やキャリア情報の管理

各従業員がこれまでどのような業務を経験し、どのようなキャリアを歩んできたかは、スキル管理における重要な管理項目のひとつです。

業務経験に関する情報は、例えば、従業員に幅広い経験を積ませてジェネラリストとして育てるのか、あるいは、特定の分野に絞って経験を積ませスペシャリストとして育てるのかといった従業員のキャリア育成の判断にも活用できます。

また、スキル情報の管理だけでは見えにくいこれまでの業務経験の情報が管理されていれば、組織編成や業務配置を検討する際に参考にできる機会は多いでしょう。

なお、中途入社の社員のスキル管理を行う場合には、入社するタイミングで過去の業務経験を収集しておくことが望ましいでしょう。

有資格者と資格の取得年月日・有効期限の管理

企業で行う業務の中には、その業務を担当、もしくは監督するために資格や特定の教育を受講している必要がある場合があります。

スキル管理において、資格の取得日や教育の受講日、期限があるものは、それぞれの有効期限と更新のタイミングを通知できるようにしておくと、更新忘れによる失効が起きないでしょう。

これらの情報に加えて、運転免許や資格の証明書も合わせて管理しておくことで、必要な際に速やかに情報を取り出し活用できます。

関連記事:資格管理とは? 資格を管理する目的・方法・収集項目・システム導入のメリットなど

研修受講履歴の可視化

社内外で受講する研修の受講履歴を管理することで、受講する研修の重複を防ぎ、レベル別の研修では受講条件を満たしているかどうかを可視化できます。

また、研修の中には法的に受講が義務付けられているものもあるため、スキル管理と合わせて研修の受講履歴も管理しておくといいでしょう。内部研修の場合には理解度テスト、外部研修の場合には、受講レポートを提出してもらうことで研修内容の理解度も管理できます。

関連記事:【徹底解説】スキル管理システムとは? 導入メリットと効果、活用シーン、システムの種類について

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