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暗黙知と形式知の違いを解説。課題と実践方法をご紹介

ナレッジマネジメントを実現するためには、企業経営に影響のある暗黙知と形式知の違いを知った上でそれぞれを効果的に活用する必要があります。特に、暗黙知を暗黙知のままにせずに、形式知として複数の人が利用できるような状態にすることが重要です。

この記事では、暗黙知を暗黙知のままにしておくことの課題や形式知化する際のポイントを解説します。

暗黙知と形式知の違い

暗黙知と形式知は、ナレッジマネジメントにおける重要なキーワードです。はじめに、暗黙知と形式知の違いについて紹介します。

暗黙知と形式知の違い

暗黙知とは

暗黙知は、個人が持っている知識や経験、ノウハウなどで、明確に言語化されておらず共有できる状態になっていないものです。知識やノウハウを暗黙知のまま維持することは、他者に対する優位性を保ち自身の仕事や仕事における評価を守ることに繋がります。

ある仕事に対する暗黙知を獲得するための代表的な方法は、その仕事を実践することです。実際に実践することで、注意すべきポイントや重視すべき内容などのノウハウを暗黙知として獲得できます。

形式知とは

形式知は、個人が持っている暗黙知をマニュアルやテンプレート、データベースなどの形で他者に共有できる状態にしたものです。個人が保有しているノウハウを形式知化することによって、さまざまなメリットがあります。

暗黙知を日常的に形式知化することで、自身をサポートできる人材を増やしたり、仕事を新しいメンバーに任せることで空いた時間により、他の仕事にチャレンジしたりできるようになります。

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暗黙知を形式知化できないことによる課題

暗黙知を個人が持つ暗黙知のままにしておくことは、個人にはメリットがある場合もあります。しかし、中長期的に考えた場合や広い範囲に関係するナレッジマネジメントを考えると、さまざまな課題に繋がります。ここでは、具体的な課題を4つ紹介します。

暗黙知を形式知化できないことによる課題

人材の教育・育成に時間がかかる

暗黙知を形式知化できないことによる課題としてもっとも顕著なのは、人材の教育、育成に時間がかかってしまうことです。毎回OJT形式で一緒に仕事をしながら教えていくことはできますが、常につきっきりでの指導が必要で教える側の工数が莫大に掛かり現実的ではありません。

また、教育を受ける側も可視化された資料などがない状態では、予習や復習が難しくなります。マニュアルがあれば単独で学べるような仕事でも、形式知化されていないことで大きな時間が必要です。

形式知を元に取り組むことで得られる気付きや新たなアイディアも、形式知化できていない状態では得られなくなってしまいます。

属人化の加速により代替できる人材が不在

暗黙知を形式知化できなければ、属人化が加速し代替できる人材がいなくなってしまいます。

例えば、暗黙知を持った人が病気やけがで急に休むことになった場合、形式知化できていないとそれをカバーすることが難しくなります。1日,2日であれば、他のメンバーでなんとかカバーできるかもしれませんが、休業期間が長期に及ぶとそれも難しいでしょう。

特に近年は、フレックス制度の拡充や短時間勤務など柔軟な働き方の加速に加えて、国を挙げて育休取得者の増加を促進するなど、過度な属人化によるリスクは大きくなっています。引継ぎが十分にできない場合に備えて、仕事をサポートできる人材を育成しておく必要があります。

メンバーのスキル管理(見える化・可視化)ができない

組織のマネジメントをするためには、組織を構成するメンバーのスキル管理が必要不可欠です。スキル管理を適切に行うためには、各メンバーがどのようなスキルをどの程度のレベルで持っているのか、見える化・可視化する必要があります。

しかし、必要な知識やノウハウが暗黙知になっている状態では、どのようなスキルを管理すればいいのか、また各項目に対してどの程度のレベルにあるのかを管理するのは困難です。

メンバーのスキル管理ができていないと、新たな仕事を与える際に適切な判断ができなくなり、新たな組織を構築する際に与える仕事と組織の能力がアンマッチな状態になります。

必要なスキルを持った人材が不足し、それを補完するために必要な教育をする人材がいない状況に陥ることがあります。反対に、組織全体で担う仕事に対してスキルが過剰になり、活かしきれない場合もあるでしょう。

組織全体としては、メンバーのスキルを活かせていない状態に陥ります。

ずっと同じ仕事から脱却できない

ここまで紹介した課題は、組織としての課題がほとんどでした。最後に、個人としての課題を一つ紹介します。

暗黙知を暗黙知のままにしておくことで、暗黙知を活かせる仕事では他者よりも優れた状況を作れます。その仕事を一定以上のレベルでできるのが、自分ひとりしかいないという状況であれば、仕事を失うことはないでしょう。

しかし、担当している仕事をしている中で成長が感じられず飽きてしまうような状況でも、その仕事が組織として必要であれば、自分がその仕事を担当し続けなければいけません。新たな仕事にチャレンジしたいのにその時間を確保できず、成長を感じられないことからモチベーションの低下やキャリアプランの狂いに繋がることがあります。

このような状況に陥ってしまうことで、組織面としては仕事を任せられる存在のパフォーマンス低下により、組織としても成果が出しにくくなります。

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暗黙知を形式知化する実践方法

これらの課題の多くは、個人が持っている暗黙知を形式知化することで解決が期待できます。暗黙知を形式知化する際の代表的なプロセスとしては、SECIモデルがあります。

SECIモデルについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、ご確認ください。

ここでは、暗黙知を形式知化する具体的な事例を紹介します。

形式知化できない場合のリスクを自職場に置き換える

暗黙知を形式知にする重要性を理解し、SECIモデルなどのプロセスが存在することをわかっていたとしても、現場では形式知化の優先順位が下げられてしまうことが多くあります。

そこで、暗黙知を形式知化することの必要性を強く認識し共有するために、自職場で形式知化が進まない場合にどのような状況に陥るのかを徹底的に考え、議論するといいでしょう。多くの組織において、人材不足が加速して各メンバーの負荷が増し、それによってさらに人材が流出するリスクが増大します。また、人が少ないことで状況変化に対応できず、悪循環にはまってしまうでしょう。

暗黙知を形式知化することに関する必要性、実施しない場合のリスクを組織全体として共有できたら、形式知化する仕事の優先順位を高められます。

形式知化を評価する雰囲気と仕組みを構築する

暗黙知を形式知化することの業務における優先順位が下がってしまうもう一つの理由としては、暗黙知を形式知化することに時間を使ってもそれが評価されにくいことが挙げられます。

本来であれば、暗黙知を形式知化することは組織として重要なことであり、高く評価されるべき業務です。そこで、暗黙知を形式知化することに対して、他のメンバーにもわかるように評価する仕組みを構築します。また、それを評価する組織全体の雰囲気も醸成することが重要です。

仕組みを構築していくことで、少しずつ暗黙知を形式知化する仕事の優先順位が上がるでしょう。成果を実感できるようになれば、暗黙知の形式知化は加速し、さらに組織全体の成果に繋がります。

まとめ

ナレッジマネジメントにおける暗黙知の形式知化は重要ですが、放っておいても勝手に進むものではありません。暗黙知をそのままにしておくことで、属人化が加速し、組織としての柔軟さも失われてしまいます。

自身が所属している組織で形式知化を進めるためには何が必要なのか、組織全体として考え、形式知化を進めることが重要です。

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