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【事例アリ】CBM(状態基準保全)とは? 概要、注目される理由、導入までの流れ、メリットとデメリット、TBM・BDMとの違い

CBMとは?

近年、製造業ではCBM(状態基準保全)が広まりつつあります。

製造業では、サプライチェーンを維持するために安定した生産が必要不可欠です。しかし、広範囲に影響を及ぼす故障が生じてしまった場合には、設備停止期間が長期にわたり、生産計画に沿った部品供給ができなくなります。当然、サプライチェーンにも多大な影響を与えてしまいます。そこで注目を集めているのがCBMです。

この記事では、CBMの概要、導入までの流れ、事例、TBMやBDMとの違いについて解説します。

06. 計画的な技能・技術伝承

CBMとは?

CBM(状態基準保全)とは「Condition Based Maintenance」の略称で、生産設備や導入している機械そのもの、もしくはそれらを構成する部品の稼働状況を調べて分析した結果を保全業務に取り組む際に下す判断の根拠とする考え方です。

CBMでは、生産に影響を与えるような明らかな故障や不具合が発生する前に予防的に保全を行います。CBMは予防保全に分類され、予防保全の中でも「予知保全」と表現されることがあります。

一方で、CBMには懸念点もあります。CBMはメンテナンスのタイミング・頻度を最適化できますが、保全を行うタイミングを判断することが難しく、適切に判断できなかった場合に悪影響が生じる恐れがあります。

CBMが注目を集める理由

CBMを実現するためには、設備の状態をリアルタイムで把握し、その情報を元に的確な判断を下す必要があります。しかし、「設備の状態をどのように把握するのか」「把握した状態はどうやって分析するのか」といったことを明確化するのは困難でした。

近年は、センサ技術の向上やIoTの普及、データ分析に必要不可欠なAIに関する技術開発が急速に進んだことで、CBMを実現するための課題を解決しやすくなりました。IoTセンサを導入し、クラウドに収集したデータをAIで分析することで、状態量推定に基づく保全タイミングの明確化が可能です。

このように、従来は技術的に難しかった課題を解決できる環境が整いつつあることで、CBMを導入する企業が増えています。また、導入企業がCBMによって成果を上げていることも知られるようになり、現在ではCBMへの注目度がさらに高まっています。

CBM導入のメリット

CBMの導入は簡単ではありませんが、導入することで以下のようなメリットがあります。

設備稼働の安定化

CBMの重要な要素である設備の状態量推定を適切に行うことにより、設備に不具合や故障が生じるタイミングを高い精度で推定できます。

故障に至ってしまうと復旧までに長い時間がかかるため、その間は設備の停止が必要となります。設備の稼働状態が安定せず、サプライチェーン全体に影響を及ぼす恐れがあります。

CBMによって故障が生じる前に保全を行うことができれば、設備停止も最低限の期間に抑えられるため、設備を安定的に稼働させられます。

設備寿命の長期化

一部の部品が劣化した状態で稼働され続けることで、他の部品にも悪影響を与える可能性があります。その結果、故障が発生時にさまざまな部品が悪影響を受け、保全期間が長期化してしまう恐れがあります。

CBMでは、故障に至る兆候をとらえてメンテナンスを行えるため、一部の部品劣化が他の部品に対して大きな影響を与える前に保全を行えます。設備全体のバランスが保たれ、結果的に設備の長寿命化につながります。

保全頻度の最適化

故障が生じる前に保全を行う予防保全では、生産台数や稼働期間などの定量的な情報によって保全タイミングを決定するため、場合によっては問題が生じていない状態で部品交換などを行うこともありえます。

早すぎる保全によって、交換部品費や保全工数が増加することが予防保全のデメリットです。しかしCBMでは、それぞれの状態量に応じて保全タイミングを決めるため、不要な部品交換や保全を行わなくても済むようになります。

また、状態量を常に把握することで、突発的な保全機会の発生を防げます。

保全業務の標準化

従来から広く行われている事後保全を行う場合、発生した事象に応じて適切な対応を行う必要があります。

頻繁に発生する対応が容易な事象であれば問題はありませんが、発生頻度が少なく対応のために一定のスキル・経験が必要とナル事象が発生した場合、経験の少ない担当者が適切な対応策を検討することは困難です。その結果、復旧に時間がかかり、ベテラン担当者への負荷も高まってしまいます。

CBMを導入すれば、故障が発生する前に保全業務を行うため、発生した事象に応じた対応が不要になります。実施すべき業務が限定できれば標準業務として定義できるため、対応マニュアルも作成しやすく、担当者は経験を積みやすいでしょう。

CBM導入に必要な準備

魅力的なメリットが多いCBMですが、導入は簡単ではありません。CBMを導入するためには、以下のような準備が必要です。

データ収集を行うIoTシステム

CBMで設備の状態量を推定するために必要なデータの収集や蓄積を担うのは、IoTシステムです。具体的にはネットワークに接続可能なIoTセンサ、センサで収集した情報を蓄積しておくクラウドを準備しておく必要となります。

センサは、取得したいデータの種類や精度によって異なるため、適切な種類を選定しておく必要があります。また、IoTシステムはネットワークによって接続されているため、セキュリティを万全にしておくことが重要です。

データに基づいて判断を下すAI

CBMでは、蓄積されたデータから状態量を推定し保全タイミングの判断を行います。

膨大なデータを人間がリアルタイムに処理することはできません。リアルタイムではない場合でも、判断にはノウハウが必要となり作業は属人化しがちです。そのため、簡単には他の工場や他の設備に展開できませんでした。

IoTシステムのクラウド上にAIアルゴリズムを導入することで、データの処理速度や展開性の課題を解決できるため、CBMを実現しやすくなります。

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判断基準を明確にする設備の専門知識

CBMは、IoTシステムやAIアルゴリズムだけではなく、設備の専門知識も必要です。

そもそも適切なIoTシステム・AIアルゴリズムを構築するためには、「保全タイミングを最適化するためには、どのようなデータが必要なのか」「アルゴリズムによって算出された保全タイミングは適切なのか」といったことを判断できる必要があります。

この判断を適切に行うためには、設備に関する専門知識が必要不可欠となります。

CBM導入における注意点

ここまで紹介したようにCBM導入には多くのメリットがありますが、導入には以下の注意点があります。

専用システム導入に必要なコスト

効果的なCBMを実現するためには、設備に合わせた専用のIoTシステムやAIアルゴリズムを構築する必要があります。これらを構築・運用するためには、初期導入費用に加えてセンサ精度を保つための校正やアルゴリズムの更新など、メンテナンスコストも必要となります。

CBMを実現するシステムの導入・運用に必要なコストと、CBMを導入することによるメリットを天秤にかけたうえで、導入を検討することが重要です。

想定外リスクへの対応明確化

CBMでは、設備が不調となる状態を推定することでメンテナンスタイミングを把握できますが、全ての事象を完璧に検出できるわけではありません。

そのため、保全担当者は、CBMでは対応しきれない故障リスクがあることを把握した上で、緊急事態への対応策をあらかじめ想定しておく必要があります。

CBM以外の保全の考え方

ここで、CBM以外の保全の考え方についても紹介します。

CBMとTBMの違い

TBMは、Time Based Maintenanceの略称で、日本語では「時間基準保全」と呼ばれます。

一般的には、予防保全の一部に分類されます。故障が発生する前に保全業務を行うという点ではCBMと同様の意味を持ちますが、設備の状態ではなく時間を基準にする点がCBMとは異なるところです。

TBMでは、メンテナンス周期を決めることで作業者や設備の調整がしやすくなるメリットがありますが、メンテナンスコストや全体の作業工数は増加する点には十分注意しましょう。

CBMとBDMの違い

BDMは、BreakDown Maintenanseの略称で、日本語では「事後保全」と呼ばれます。設備や機械に故障が発生してから、発生した故障に応じたメンテナンスを行う考え方で、多くの企業で採用されています。

メンテナンスに時間がかかる場合には、設備が停止するダウンタイムが長くなってしまうためサプライチェーンに大きな影響を与えてしまう点がデメリットです。そこで現在では、TBMやCBMの考え方を導入していこうという動きが広がっています。

CBMの事例

最後に、CBMを導入した「コマツ」と「JR東日本」の事例を紹介します。JR東日本の事例は製造業における生産設備についてのものではありませんが、製造業でも十分に参考になる内容です。

コマツ(株式会社小松製作所)の事例

コマツは、建設機械だけでなく、製造業の生産に用いる産業機械も扱っています。

CBMを実現するためには、設備に後からデータ取得用のセンサを取り付けることが一般的です。しかし、コマツの産業機械は、外部センサを必要としないところに特徴があります。

コマツでは、設備自体にあらかじめ搭載されているセンサから稼働状況や制御情報を取得し、それを元にメンテナンスタイミングを明確にしています。

JR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)の事例

JR東日本は、鉄道輸送における安全性と効率性を両立するためにCBMを活用しています。

線路や車両にセンサを取り付けることで状態をリアルタイムで把握し、メンテナンスタイミングの最適化を実現しています。

線路におけるCBMでは、線路の不自然な歪みを判定し、レールの締結装置やボルトを撮影。このことで、電車が走行する際に悪影響を与える状態を明確にし、メンテナンスタイミングを判断しています。

鉄道会社の中では、東急電鉄株式会社でも同様の考え方でCBMを導入していることが公表されています。

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