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2024.4.19
品質保証と品質管理の違いをご存知でしょうか? 企業によってそれぞれの仕事の範囲は異なる場合が多く、片方の部署しかない企業もあると思います。
この記事では品質保証と品質管理の一般的な仕事内容や違い、両者のあるべき姿やスキルアップの方法を解説します。
目次
業界や企業方針、人事配置の違いで、品質保証と品質管理の仕事内容は大きく変わりますが、この記事では一般的なそれぞれの仕事内容をご紹介します。
品質保証とは、「Quality Assurance」、略して「QA」とも呼ばれ、プロセス全体のQMS(品質マネジメントシステム、Quality Management System)の構築を担います。
プロセス全体とは、製品開発・設計・製造・出荷・アフターサービスといった全行程を指します。一方でQMSとは、製品やサービスの品質を継続的に改善していく仕組みのことを指します。
つまり品質保証は、企業全体に対する改善の仕組みを作り上げ、その仕組みをとり回していく役割のことであると言えます。
以下では、品質保証の具体的な仕事内容を列挙します。どの業務も社内の他部署はもちろん、顧客や材料購入業者(サプライヤー)との連携が重要です。
品質マニュアルや品質目標など企業全体の品質方針の策定、文書体系のような社内全体の品質ルールの策定などを行う。
関連記事:QMS(品質マネジメントシステム)とは? 目的、規格、ISO 9001要求事項との違いやQMS構築時のポイントを解説
製品によっては開発段階で顧客への報告義務があるため、報告の取りまとめを行う。
サプライヤーへQMS構築の要求、不具合材料への是正指示などを行う。
顧客からの不具合連絡に対し、波及範囲の調査や是正処置の指示、顧客への説明などを行う。
顧客からの監査準備、当日の対応、指摘事項の取りまとめなどの対応をする。
顧客からの要求事項が実現可能か検討を行い、実施する部署へと指示を行う。
設備や材料などの変更について顧客に申入れ・試験結果の報告などを行う。
社員に対し品質知識・意識の向上を促す。
内部監査員の認定や内部監査計画の策定を行う。
審査機関との連絡や、指摘事項への対応を行う。
関連記事:ISO 9001とは? 目的、メリット、要求事項、取得の流れを解説
サプライヤーへのヒアリングや、顧客からの調査依頼に回答する。
品質管理とは、「Quality Control」、略して「QC」とも呼ばれ、製造工程における製品の品質管理を行います。製造工程における製品の品質管理とは、設計通りの製品が製造できているかを監視する役割のことを言います。
具体的には、下記のような仕事を担う場合が多いです。品質管理の業務も他部署との連携が必要不可欠です。
製造中に行った製品の品質検査、あるいは検査結果が妥当であるかチェックする。
出荷前の品質検査、あるいはその検査結果が妥当であるかチェックし、出荷判断を行う。
不具合の原因分析や不適合品の管理、再生産・改善策の立案等を行う。
製造工程で発生する品質不具合の集計や不具合内容の分析、改善策の立案や製造工程での改善活動のフォローを行う。
前述のとおり品質管理と品質保証の仕事内容は全く異なります。業務範囲・責任・連携部署・所属という4つの観点からさらに詳しく解説します。
品質保証の業務範囲はプロセス全体です。開発段階から出荷後まで品質保証を行います。出荷後は品質保証期限までの保証であることが一般的ですが、業界によってはそれ以上の保証を求められ、長期的な目線が必要です。
社内の全部署と連携することはもちろん、必然的に顧客やサプライヤー、監査機関など社外との接点も多くなるでしょう。プロセス全体の品質保証を担うため、所属は他の部門とは独立していることが多く、経営層へも監視・指摘する立場であることが求められます。
一方、品質管理は製造工程における品質管理、出荷判断を行いますので、業務範囲は製造工程のみです。責任も出荷する時点までとなり、顧客からの要求事項や社内基準などをもとに出荷判断を行います。
部署が所属しているのは製造部内や工場内の品質管理部(課)であることが多いです。
品質管理と品質保証で仕事内容や業務範囲が大きく異なる原因は品質に関する考え方の変化にあると言えます。
以前は品質と言えば単純に「消費者が使用できるかどうか」「顧客からの要求を満たしているか」という観点のみからとらえられ、製造工程における品質管理による検査だけで十分と考えられていました。これは社内に目を向けた「提供者視点」といえます。
しかし、社会の高度化が進むにつれて、製品の品質は「性能面」からだけではとらえられなくなっています。「アフターサービスが充実しているか」「製品紹介は分かりやすいか」「社会的意義を果たしているか」などの多種多様な要求に応えなければなりません。これらに応えていくためには「顧客視点」での品質保証が必要になります。
社外に目を向けた顧客視点の品質保証と、社内に目を向ける提供者視点の品質管理。この2つの視点を両方満たすことが顧客満足度の向上につながります。
品質を向上するには、品質保証と品質管理の両方からの日常的な改善活動が必要です。
品質保証としては、日頃から効果的なQMSの構築に尽力しなければなりません。品質保証はプロセス全体に責任を負い、顧客からの要求に触れる機会も多いので、それらを適切に社内に伝達していくことが重要です。
また、品質保証の企業内での立ち位置によっては、品質を維持するのに各部署に十分なリソースが配分されているか確認しておく必要があります。もし十分に配分されていない場合は経営層に指摘を行うなどの役割を果たすことも必要でしょう。
一方で、品質管理は製品品質に直接関わる部門です。設計通りのモノ作りができているかといった監視や、日々の製造工程で起こる大小さまざまな不具合に対し是正処置や水平展開の実施が品質の向上につながります。
昨今、日本の製造業では品質不具合の発覚が相次いでいます。悪意をもった品質不正は言語道断ですが、調査結果からは品質不具合の多くが適正品質を見失い過剰品質になっていた、経営層からの圧力が強かったなど、現場の担当者だけではなかなか是正しにくい内容が多いことが分かります。
品質管理としては製造現場の不具合を見逃さないこと、品質保証としては不具合が温存されてしまうような仕組みや風土になっていないか監視しなければなりません。
日本国内の自動車リコール件数を例に、どのような品質不具合が起きているか、品質保証と品質管理としては何を行うべきなのかを解説します。
下表は2010~2014年度にリコール届出のあった1,740件の不具合の発生原因別の割合です。
設計原因の不具合としては、評価基準が甘かった、開発段階の評価に不備があったなど、製造原因の不具合としては作業員のミス、作業マニュアルの不備、あるいは設備や工具の保守管理の不備が挙げられます。
設計原因が61.4%に対し、製造原因でも38.3%も生じています。品質事故を減らすには双方からのアプローチが重要であると言えます。
品質保証には、設計段階において評価内容や基準が十分であるかをより顧客に近い立場で開発を監視する役割があります。製造原因の内容についても品質マネジメントシステムの中で事前に原因を発見・改善できなかったのかという観点で関わっていきましょう。
プロセス全体を俯瞰する立場だからこそ気付けたり、工場から独立した部門であるからこそ経営層に直接改善を指示できたりもするはずです。
一方、品質管理としては、「指示通りの作業が行われているか」「ミスが起こりやすい作業になっていないか」「マニュアルは分かりやすいか」「設備や工具の保守管理は適切か」といった観点から製造工程を監視しましょう。製造現場に近いからこそ気付く部分が多いはずです。
上記はごく一例にすぎませんが、他社の例も参考にしながら過去に起きた品質不具合について学びを深め、自社の品質不具合の発生を防ぐよう活動していきましょう。
参考:IATF 16949:2016 解説と適用ガイド-IATF認証取得及び維持のためのルール 第5版
品質保証・品質管理でスキルアップするにはセミナーの受講がおすすめです。一般社団法人のような民間団体だけではなくコンサル会社のような民間企業でも多くのセミナーが開催されていることからも需要の高さがうかがえます。
品質管理の分野ではSQC(統計的品質管理)やQC7つ道具に関するセミナーがおすすめです。また、品質保証の分野であればISO 9001などの国際規格に関するセミナーや内部監査に関するセミナーで品質マネジメントシステムの全体像を学ぶのがいいでしょう。
下記に民間団体のセミナーのリンクを提示します。講師出張などもありますので企業に招いて多数の社員を参加させ学びを深めることもできます。
なお、品質保証・品質管理の仕事内容から、他部署と連携する能力やロジカルシンキング力が求められます。コミュニケーション能力や会議を円滑に運営するファシリテーション能力、ロジカルシンキングを鍛えるセミナーも多数ありますので、ぜひ参考にして下さい。
品質保証・品質管理に関する知識を身につけるだけでなく、知識を証明したい方にはQC検定(品質管理検定)を受検するのがおすすめです。
QC検定はJSA(日本規格協会)が主催する品質管理に関する知識を問う検定で、2023年3月の開催では受験者数が4万人を超える受検者数の多い検定です。
1級〜4級に分かれており、2級以上の合格者であれば転職でも有利と言われています。
統計的な手法から、品質マネジメントシステムまで品質に関する広範な知識が問われますので、受検勉強を通じて大きくスキルアップが期待できます。
この記事では、品質保証と品質管理の違いやあるべき姿について解説しました。企業によって品質保証・品質管理に求められる役割は異なると思います。しかし、品質不具合をなくすために、製造に近い「品質管理」の視点とプロセス全体を俯瞰する「品質保証」の視点の両方が必要なことに変わりはありません。お互いが連携し合えるような組織づくりを行いましょう。
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