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設備保全とは?仕事内容、目的、考え方や資格について解説

設備保全とは

製造現場では、さまざまな設備によって生産業務が行われています。そんな製造現場において、設備が安定して稼働し続けるために欠かせないのが設備保全です。

本記事では、設備保全の仕事内容や目的、考え方や仕事に活かせる資格などを解説します。設備保全をレベルアップして突発的な設備の故障を減らしたいとお考えの方はぜひ、本記事を参考にしてください。

06. 計画的な技能・技術伝承

設備保全の仕事内容:保守・メンテナンス・修理との違い

設備保全は「設備が稼働できるように維持していく全般的な活動」

設備保全とは、製造現場の設備が万全な状態で問題なく稼働できるように、点検や部品の交換、修理などの全般的な作業を行う活動です。そのため、保守・メンテナンスや修理といった意味合いも含んでいます。

製造現場では、組み立てや塗装、検査などの行程においてさまざまな設備が稼働しています。それらの設備はメンテナンスが必要ですし、いつかは劣化故障が発生するため修理も必要です。

設備が万全でないにもかかわらず稼働し続ければ、不良品の発生や生産ラインの停止によって生産性が大幅に下がるかもしれません。また、設備の故障によって従業員に危険を及ぼす可能性も考えられます。

設備の故障を未然に防いだり、適切なタイミングで部品を交換したりする設備保全は、安定した生産活動と従業員の安全を守るためになくてはならない活動です。

保守・メンテナンスは「必要に応じた整備や修理を行う活動」

保守・メンテナンスは、設備が故障しないように点検したり、整備したりする活動を指します。基本的には設備保全と同じ意味を持ちますが、設備保全の活動の中に保守・メンテナンスが含まれているといったイメージです。

つまり保守・メンテナンスは故障した後の修理活動等は含まれず、あくまで設備の故障を未然に防ぐ活動を指します。

修理は「設備に不具合が生じた場合に行う活動」

修理は、設備に故障など何らかの不具合が発生した場合に行う活動です。不具合が発生する前に設備を点検して故障を未然に防ぐための活動は含まれず、不具合が生じた後に適切な部品の交換や調整などを行う活動を指します。

設備保全の目的

設備保全の目的は、設備故障の防止と設備の長寿命化に大別されます。設備故障の防止にはさまざまな効果がありますので、1つずつ見ていきましょう。

設備故障の防止      

停止時間の減少

設備保全によって設備の故障が防止できると、停止時間の減少につながります。

設備に不具合が生じると、作業が一時的に停止します。生産ラインにはさまざまな設備が関わっているため、不具合の程度や設備の種類によっては生産性が大きく下がる可能性があります。

また、1回あたりの停止が短くても、何度も起きると生産性は大きく下がります。例えば、設備が5分間停止したとして、それが20回起きれば100分もの間、作業が止まるという計算です。

設備が故障しづらくなると停止の頻度も少なくなるため、突然の停止で生産ラインが止まる時間を減少できます。

不良品の発生防止

設備故障の防止は、不良品の発生防止にも効果があります。

設備に何らかの不具合が生じているにもかかわらず、不具合に気づかないまま生産を進めてしまうと、大量の不良品が発生する可能性があります。

大量に発生した不良品の廃棄費用や再製造のコストは工場にとって多大な損害です。

安全性の確保

設備保全による故障の防止は、従業員の安全性の確保にもつながります。

工場には、大型の設備や人が行えないような危険性を伴う作業を行っている設備もあり、設備トラブルの程度によっては多くの人を巻き込むような重大事故につながる危険性もあるでしょう。

また、安全装置の故障も従業員に危険が及ぶ可能性があります。例えば安全装置に不具合が生じている最中では、気付かずに従業員が危険区域に立ち入る、危険な薬液が漏れているのに気付けない、といった事例が起こるかもしれません。従業員の安全性を確保するためにも、設備保全で故障を未然に防ぐ必要があります。

修理による損害の低減

設備保全によって故障が防止できると、修理による無駄なコストの低減にもつながります。

設備不具合を直すためには修理費用がかかります。故障の程度や設備の種類によっては多額の費用がかかる可能性もあります。

無駄な修理コストの削減には、設備不具合を未然に防止する必要があるでしょう。

設備の長寿命化

設備保全は、設備全体の長寿命化にも効果があります。

設備はさまざまな部品で構成されており、使用すればするほど劣化や摩耗により最終的に故障します。そのため、適切なタイミングで設備の部品を交換する必要があります。

しかし、設備のメンテナンスを怠っていると、部品の劣化に気づかないまま稼働させ続けてしまうため、他の部品に負荷をかける可能性があります。劣化したままさらに稼働を続ければ、結果的に設備全体の短命化につながります。

とはいえ、劣化していないのに部品を交換してしまうと無駄な交換コストが増える場合もあります。無駄なく設備の寿命をのばすには、設備保全によって正確に交換計画を組み、適切なタイミングでの部品交換が必要です。

設備保全の3種類の方式とあるべき姿

設備保全説明図

設備保全には、以下3つの方式があります。

  • 事後保全
  • 予防保全
  • 予知保全

それぞれの方式の特徴について、詳しくみていきましょう。

関連記事:予防保全とは? 事後保全や予知保全との違い、導入メリット・デメリット

事後保全

事後保全とは、工場や生産現場において設備に何らかのトラブルが生じた際に行う保全業務です。

機械の停止や機能低下など、設備が壊れたときに直して復元する「修理」のニュアンスを含んでいます。故障の種類によっては稼働が続けられる場合もあるかもしれませんが、いずれは生産ラインが完全に止まってしまう恐れもあります。

そのため、設備に不具合や故障が生じた場合は、不良品の発生低減や機械の停止時間を短縮するために迅速な対応が求められるでしょう。

事後保全は、設備の何らかのトラブルが生じた場合のみ行うため、保全業務にかかる人件費や修理費用を抑えられます。一方、トラブルの後に対処するため、不良品の発生や突発的な故障のリスクは避けられないといったデメリットもあります。

事後保全では機能停止型故障と機能低下型故障の2つの種類があります。

機能停止型故障

機能停止型故障とは、設備の機能が完全に停止してしまう故障です。設備の機能が完全に停止してしまうと、その間生産作業が滞ってしまうため、迅速に修理・復旧作業を行う必要があります。

機能低下型故障

機能低下型故障とは、設備の動作不良や機能低下にあたる故障です。作業スピードが遅くなった、作業にムラがあるなど、機能停止しているとは限らないものの、何らかの機能が低下している状態を指します。

機能停止型故障に比べて修理の優先度は低いものの、放っておくと不良品の発生や質の低下につながる恐れがあるため、事後保全を行う必要があります。

予防保全

予防保全とは、設備の故障を防止するために事前に行う保全業務です。過去の部品の劣化スピードや生じた不具合などを元に計画を立て、計画に沿って設備の点検や部品の交換、故障前に修理などを行います。

事後保全とは異なり、設備の故障を未然に防ぐために行う業務のため、不具合や故障による不良品の発生や機械停止のリスクを抑えられるのが特徴です。

一方、定期的に点検や交換を行う必要があるため、部品の在庫を多めに確保しなければならず、その分の材料費がかかります。また、点検や交換業務には人手がいるため、人材の確保も必要となるでしょう。

予防保全には、時間計画保全と状態監視保全の2つの種類があります。

関連記事:

時間計画保全

時間計画保全とは、交換計画に沿って行う保全業務です。部品の状態に関わらず、決められた期間使用した部品については交換を行います。定期的に部品の交換を行うため不具合や故障のリスクを最小限に抑えられる一方、劣化していなくても交換するため人件費や材料費がかかる可能性があります。

状態監視保全

状態監視保全とは、設備や部品の状態を点検し、劣化の状態に応じて適切に調整や交換を行う保全業務です。設備の点検には、点検箇所のチェックリストや点検日の計画書などが用いられます。点検には労力が必要ですが、時間計画保全に比べて劣化の状態に応じ交換などを行うので無駄な交換のコストを削減できます。

予知保全

予知保全とは、設備トラブルが起きそうな予兆を察知し、故障する前に対処する保全業務です。状態監視保全に近い考え方で、設備や部品の状態を、センサーなどを用いて監視し、必要に応じて部品の交換や調整を行います。

センサーの測定値が不具合の可能性がある一定ライン(しきい値)を超えたときに保全業務を行うため、不具合が生じていない部品の交換にかかる人件費や材料費など無駄なコストの削減が期待できます。また、不具合が発生する前に対処できるため、突発的な設備故障や重大事故の発生を抑制できるでしょう。

IoTやAIの活用          

予知保全の活動においてloTやAIといったITテクノロジーの連携が進んでいます。

予知保全において、設備トラブルの予兆を察知して適切に対応するには、設備に関する膨大な情報を集計して管理することが重要です。しかし、さまざまな設備データの集計・管理をすべて人が行うとなると、かなりの時間と人材が必要となります。そこで重要となるのが、loTやAIの活用です。

工場内の設備がloTによってインターネットにつながれば、生産設備に関するさまざまなデータをクラウド上で管理できるようになります。また、AIの活用が進めば、AIがデータから予兆を自動的に判断し、より正確な予知保全が実現する可能性もあるでしょう。

設備保全のあるべき姿

現在設備保全は、計画に基づいて設備の点検や部品の交換を行う予防保全が主流です。また、loTを活用してデータを測定して管理する予知保全を導入している会社も増えつつあります。

製造現場におけるさまざまな設備がデジタル化している昨今、設備保全においてもloTやAI技術を活用した保全業務の効率化が求められます。DX化によって設備に関するデータの見える化を行い、予知保全を進めていく必要があります。

しかし、loTの導入などは非常に費用が掛かります。予算の少なさから導入が難しい企業もあるでしょう。いきなりすべての設備を導入する必要はありませんので、故障しやすい設備から導入を検討してみてはいかがでしょうか。

設備保全の仕事について       

設備保全の将来性

製造のDX化やIT化が進み、製造現場における作業員は減少傾向にあります。しかし、一方で機械設備が高度になればなるほど、その機械を点検したり修理したりといった保全業務ができる人材が必要です。

そのため、将来的に作業員の数が減少したとしても、設備保全の重要性はますます増加していくでしょう。

設備保全業務は大変だと言われることもありますが、実際は設備保全を行っている会社の状況による場合がほとんどです。

予防保全や予知保全が進んでいる会社は突発的な故障が少ないため、急な呼び出しは少ないでしょう。設備保全に理解がある会社を選べば、比較的ストレスなく保全業務が行えるのではないでしょうか。

設備保全に関する資格

設備保全は必ずしも資格が必要な業務ではありません。しかし、設備保全に関する資格を取得していると、業務に関する理解を深められたり、転職が有利になる可能性があります。

設備保全に関する資格には、次のようなものがあります。

  • 機械保全技能士:機械修理やメンテナンスに関する国家資格

機械保全技能士の詳しい内容は下記ページを参考にしてください。

関連記事:機械保全技能士とは? 各級の試験内容、合格率、難易度、勉強方法を解説

  • 自主保全士:「公益社団法人日本プラントメンテナンス協会」が主催する設備保全に関わる民間資格

自主保全士の詳しい内容は下記ページを参考にしてください。

関連記事:自主保全士とは?メリット・取得方法・試験内容・勉強方法を解説

  • 電気工事士:電気設備の工事に関わる国家資格
  • 電気主任技術者:電気設備の工事において保安監督を行える国家資格

  ※電気工事士、電気主任技術者に関する情報は一般財団法人電気技術者試験センターの

サイトをご覧ください。

参考:一般社団法人 電気技術者試験センター

これらの資格は、設備保全の幅広い知識を得られるため業務の幅を広げることにもつながるでしょう。

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