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ISO13485とは? 要求事項とISO9001との違いを説明

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ISO13485は、医療機器の品質マネジメントシステムに関する国際規格です。

人命に大きな影響を与える医療機器は、一般的な製品の品質マネジメントシステムとは別に、医療機器独自の国際規格が設けられています。

この記事では、ISO13485に関して、その概要や要求事項、ISO9001との違い、ISO13485の認証を取得するメリットについて解説します。

04. ISO力量管理

ISO13485とは

ISO13485は、医療機器に関する品質マネジメントシステムの規格です。ちなみに日本国内でJIS化されたJIS Q13485も同様の内容です。

なお、ISO規格の中で、品質マネジメントシステムに関する規格はISO13485だけではありません。代表的なものとしては、さまざまな製品を幅広く対象としたISO9001が定義されています。

また、マネジメントシステムの規格は他にも環境マネジメントシステムであるISO14001、情報セキュリティマネジメントシステムであるISO 27001などがよく知られています。

関連記事:QMS(品質マネジメントシステム)とは? 目的、規格、ISO 9001要求事項との違いやQMS構築時のポイントを解説

ISO13485は医療機器関連企業を対象

ISO13485が対象としているのは、主に医療機器関連の企業です。医療機器関連の企業でイメージしやすいのは、医療機器の設計や開発、製造、販売をしている企業ではないでしょうか?

しかしISO13485では、これらの企業だけに範囲を限定させず、医療機器の輸送や設置、修理、医療機器に関連するさまざまなサービスを行う組織を含めて対象としています。

少子高齢化が急速に進展し、医療機器の市場規模が拡大し続けていくことが想定される日本では、医療機器の安全性や信頼性の確保が強く求められています。

ISO13485の対象となる医療機器の種類

ISO13485はさまざまな医療機器を対象としています。

特に、埋め込み型の除細動器や人工呼吸器、カテーテルなど、生命の維持に直結したり、体内で使用したりする製品を扱う場合にはISO13485の認証取得が必須です。

その他では、疫病や負傷などの診断・治療に用いる計器や器具、医薬品、医療機器関連のソフトウェア、医療機器を構成する部品や材料など、対象となる医療機器は多岐にわたっています。

ISO9001とISO13485の違い

ISO規格の品質マネジメントシステムには、ISO9001とISO13485があると紹介しました。それぞれ対象となる製品の違い以外には、どのような違いがあるのでしょうか。

ISO9001は、消費者の利益に重きが置かれた規格と言えます。消費者の利益を大きくするために、認証を取得する企業に対してはある程度の裁量性が認められる表現がなされています。

一方、医療機器を扱うISO13485は、生命の安全を重視した規格と言えます。そのため、ISO9001ほどの裁量は認められておらず、規格の内容も品質を担保するために必要な企業活動の制限や規制、厳守すべき細かいルールがメインです。

同じISO規格の品質マネジメントシステム規格の中でも、ISO9001とISO13485では位置づけ・意味合いが大きく異なります。

関連記事:ISO 9001とは? 目的、メリット、要求事項、取得の流れを解説

ISO13485の要求事項

ISO13485の要求事項は、以下の0から8の内容によって構成されています。

※本見出しでは、JIS Q13485の内容を参考に記載しています。

  1. 序文
  2. 適用範囲
  3. 引用規格
  4. 用語及び定義
  5. 品質マネジメントシステム
  6. 経営者の責任
  7. 資源の運用管理
  8. 製品実現
  9. 測定、分析及び改善

第4項以降はさらに細かく分類されています。本記事では、多岐に渡るISO13485の要求事項の中で、他のISO規格にはない医療機器に関して特徴的な項目を紹介します。

なお、要求事項の正確な記述は、ISO13485やJIS Q13485の原文を確認してください。

4.2.3項:医療機器ファイル

医療機器ファイルとは、扱う医療機器の型式や関連製品に対しての規制、要求事項への適合性を証明するための内容が記載されたものであり、作成・管理が必要です。

医療機器ファイルに記載すべき最低限の内容としては、以下の項目が挙げられます。必要に応じて関連する項目を記載しておくといいでしょう。

・医療機器の用途や目的、使用説明を含むラベリング

・医療機器の製品仕様

・製造や保管に関する仕様と手順

・設置手順

・サービス手順

6.4項:作業環境及び汚染管理

「6.4項」の作業環境及び汚染報告は、「6.4.1項」の作業環境と「6.4.2項」の汚染管理に細分化されています。

作業環境に関しては、医療機器を扱う作業を実施する環境が、医療機器の製品品質に悪影響を与える可能性がある場合、作業環境を監視し、管理する手順を文書化する必要があります。

具体的には、作業要員の健康や清潔さ、衣服に関する要求事項、さらには医療機器を扱う要員の力量に関しても規定しています。作業要員本人に力量がない場合でも、監督者に力量があれば作業を行うことは可能です。

汚染管理に関しては、汚染される可能性がある製品の管理に対して影響のある作業環境や汚染の要因、汚染を防止するための取り決めを文書化しておく必要があります。

医療機器の中でも特に滅菌医療機器については、微生物や微粒子による汚染を管理するため、製品の組み立てや包装プロセスにおいて清浄性を維持する必要があります。

7.5.1項:製造及びサービス提供の管理

「7.5.1項」では、定められた医療機器の仕様を満たすように計画を立てて実行、実行後のの過程や結果の監視・管理について記載されています。

なお、製造管理では最低限以下の項目を含んでいる必要があります。

・製造管理

・インフラストラクチャ(建物や作業場所に関するユーティリティ、設備、支援業務

等)の認定

・プロセスパラメータや製品特性の監視と測定

・包装作業

また、個々の製品に対しては、規定されたトレーサビリティを提供し、記録を残す必要があります。

7.5.2項:製品の清浄性

扱う医療機器が、以下のいずれかに当てはまる場合には、製品の清浄性や汚染管理に関して文書化を行う必要があります。

・滅菌または使用前に、組織が清浄を行う場合

・非滅菌で供給し、使用者が滅菌、もしくは使用前に清浄する場合

・滅菌や清浄を使用前に実施できないが、使用時の清浄性が重要な場合

・製造工程内で副資材を除去することになっている場合

7.5.5項:滅菌医療機器に対する特別要求事項

各滅菌パッチに対しては、医療機器の滅菌プロセスに関するパラメータを記録し、管理する必要があります。滅菌の記録は、各製造パッチに対してトレーサビリティを確保しておこうことが重要です。

7.5.7項:滅菌及び無菌バリアシステムのプロセスのバリデーションに対する特別要求事項

滅菌及び無菌バリアシステムのプロセスにおけるバリデーションに対しては、その手順を文書化する必要があります。なお、バリデーションは、確認や検証を意味します。

滅菌・無菌バリアシステムに関する医療機器の場合、製品やプロセスを変更する場合には、事前に確認・検証を行うことになっています。また、検証結果の記録に関しては、適切に管理することが求められています。

8.2.3項:規制当局への報告

扱う医療機器に適用される規制要求事項が、規制当局への報告基準に該当する場合に、組織は規制当局に報告するための手順を文書化する必要があります。

具体的なケースとしては、有害事象の報告基準に該当する苦情や通知書の発行を要求している場合が挙げられます。

また、「4.2.5項」の記録の管理でも示されているように、規制当局への報告の記録は、医療機器の寿命に相当する期間は保管する必要があります。

ISO力量管理

ISO13485と法規制

ISO13485の中には、さまざまなシーンで法規制に従うことを意味する記載があります。

ISO13485を取得する過程でさまざまな法規制を遵守する必要が生じます。その結果、ISO13485を認証取得すれば医療機器の安全性を確保できている証明とすることができます。

ここでは、ISO13485と関係の深いQMS省令との関係性を確認しましょう。

ISO13485とQMS省令の関係

従来、日本の医療機器に関する法規制は、薬機法を頂点とする法体系で規制されていました。そのため、医療機器を製造・販売するには、薬機法に基づく認可の取得が必要となるのです。

薬機法は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称であり、医薬品や医療機器などの品質・有効性・安全性などを確保するために、これらの製造や製品表示、販売、広告などについて定めたものです。

この認可を取得するためには、厚生労働省が管理し薬機法の下に制定された「QMS(Quality Management System)省令」による行政の審査を通過する必要があります。

QMS省令は、医療機器の品質マネジメントシステムであるISO13485をベースとして制定されたものであり、ISO13485の認証取得が、QMS省令の審査と同義といえるでしょう。

実際に、ISO13485の認証を取得していれば、QMS省令審査の中で実地調査を受けなくてもいいことになっています。

現在、ISO13485は日本だけでなく、欧州やカナダ、アジア各国でも医療機器の認証基準として採用されており、従来はFDA(Food and Drug Administration)を採用しているアメリカでも、ISO13485を採用する方向で調整が進んでいます。

ISO13485の認証を取得するメリット

ISO13485の認証を取得すると、次のようなメリットが得られます。

顧客からの信頼確保

すでに紹介したように、ISO13485の認証を取得することはQMS省令などの法令を遵守していることと同等の意味を持ちます。

言い換えれば、ISO13485の認証を取得すれば、顧客に対して自社が法令を遵守していることを明らかにしていることになります。

製品の安全性や信頼性など、品質面が重視される医療機器の業界において法令の遵守を明確に示すことができれば、顧客からの信頼確保につながるでしょう。

新たな顧客の獲得

企業が新たな取引先を探す場合、取引先を選定する際の判断基準のひとつとしてISO13485の認証取得を条件としている場合があります。

また、直接的に医療機器の開発・製造、販売を行っていない場合でもISO13485の認証取得にはメリットがあります。

ISO13485は医療機器関連企業を対象としています。医療機器の輸送や設置、医療機器を利用したサービスの提供を行う企業においても取引先を選定する場合のアピールポイントとすることができるでしょう。

法令を遵守する体制づくり

ISO13485は、医療機器の品質マネジメントシステムに関する規格です。

ISO13485の認証を取得するためには、社内において高い品質を確保できるような仕組みを構築する必要があります。

また、こうした仕組みづくりは内部統制の強化ともなります。ISO13485の認証取得自体が法令を遵守する体制作りにつながると言えるでしょう。

製品品質の向上

ISO13485を認証取得するためには、製品の特長に合わせてさまざまな要求事項を満たす必要があります。

特に第6項以降では、製品に関する測定・分析・改善などのPDCAに関しての要求事項が記載されています。PDCAを回すことで製品品質の向上にもつながるでしょう。

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