建設業では、法律によって工事現場に配置すべき資格者が定められています。企業は建設業法で定められた要件にのっとって、適正な資格者管理を行う必要があります。この記事では建設業に欠かせない主任技術者と監理技術者について、両者の違いやそれぞれの資格要件をまとめました。
目次
建設業法と建設業許可
建設業法とは、1949年(昭和4年)に施行された法律です。「建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによって、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もって公共の福祉の増進に寄与すること(第1条)」という目的のために制定されました。
建設業法では、法人・個人・下請け・元請け問わず、1件の請負代金が500万円以下(建築一式工事については、木造住宅以外で1,500万円以下、木造住宅では延べ床面積が150㎡以下)の場合は、建設業許可を取得する必要があります。
建設業許可の取得には、建設業法第7条で規定された、経営面や、施工能力、財産的基礎に関する4項目の要件を満たす必要があります。
そのうちの、施工能力を測る要件が、各工事現場に配属する”技術者”に関するものです。建設工事を適切に実施するため、工事現場には一定の資格・経験を持つ技術者を配置することが定められています。該当する資格が「主任技術者」と「監理技術者」です。
建設業法における主任技術者・監理技術者とは
建設工事は、元請、下請も含め、多くの業者による様々な工程があります。工事が大規模になれば、関わる業者も増え、複雑な工程を行わなくてはなりません。そこで、工事全体の管理者として、技術面のスキルや・経験も兼ね備えた主任技術者や監理技術者の配置が義務付けられています。
主任技術者・監理技術者の職務については、建設業法 第26条で以下のように規定されています。
主任技術者及び監理技術者は、工事現場における建設工事を適正に実施するため、当該建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督の職務を誠実に行わなければならない。
主任技術者・監理技術者は共に、建設現場における施工不良や、不正行為の発生を防ぎ、工事に従事する者の安全を確保しながら企業が発注者からの信頼を得て、成長していくための環境を整えていく重要な役割を担います。
主任技術者と監理技術者の違い
主任技術者・監理技術者の最も大きな違いは、関わる工事現場の規模です。建設業者が工事を行う場合、元請けも下請けも関係なく、基本的には現場に主任技術者を配置する必要があります。ただし下請けの契約で請負代金が一定の額(合計4,000万円/建築一式工事の場合は6,000万円)以上になる場合は、主任技術者に変えて監理技術者を工事現場に配置します。
監理技術者は主任技術者よりも大規模な工事の管理を行うため、より複雑な工程管理や高度な知識を求められるほか、下請け業者も含め工事の施工に従事する者の技術上の指導監督の役割を担わなければなりません。
主任技術者に必要な要件とは
主任技術者になるには、2つの方法があります。一つは、学歴に基づく要件を満たすこと。もう一つは定められた資格を取得し、一定の実務経験年数を重ねることです。
学歴に基づく要件
・高等学校の指定学科(※)卒業後 5年以上
・高等専門学校の指定学科卒業後 3年以上
・大学の指定学科卒業後 3年以上
・上記1~3以外の学歴の場合 10年以上
指定学科については、建設業法施行規則第1条で以下の通り定められています。

資格に基づく要件
主任技術者になるには、学歴に基づく要件の他、1級もしくは2級国家資格を取得する方法、もしくは職業能力開発促進法で定められた技能検定や、一部の民間資格を取得する方法があります。
技能検定や、民間資格の取得で主任技術者になる場合は、合格後3年以上(平成16年4月1日時点で合格していた場合は1年以上)の実務経験が必要ですので、すぐに配置を検討するのであれば、国家資格の取得がおすすめです。
該当する資格については、以下の資格一覧をご確認ください。
該当する国家資格一覧

監理技術者に必要な要件とは
監理技術者になるには、業種ごとに定められている資格要件をクリアすることや、実際の工事現場で実務経験を重ねていることが求められます。また、実際の建設工事で監理技術者を務める場合は、「監理技術者資格者証」の携帯が義務付けられています。
ここでは、それぞれに必要な要件や、資格者証の発行についてを説明します。
資格や業務経歴の要件
建設業29業種のうち、指定建設業と言われている(土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業)総合的な施工技術や、より大きな責任が問われる7つの業種においては、1級の国家資格の取得、技術士の資格者又は国土交通大臣の認定が必要です。実務経験のみでは、監理技術者になることはできないので注意が必要です。
一方で、7つの指定建設業以外の22業種に関しては、国家資格の取得がなくても、一定の要件を満たした実務経験をもっていれば、監理技術者になることができます。
それぞれの業種における要件は以下の通りです。
・資格に基づく要件
※指定建設業(土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業)は必ず1級の国家資格の取得が要件に含まれます。
https://www.cezaidan.or.jp/managing/about/condition/pdf/condition01.pdf
・実務経験に基づく要件
https://www.cezaidan.or.jp/managing/about/condition/pdf/condition02.pdf
(※出典:一般財団法人建設業技術者センター)
資格者証の交付
資格取得後、実際の建設工事において監理技術者を務める場合は、一般財団法人建設業技術者センター(CE財団)が発行する「監理技術者資格者証」の交付を受けるのに加え、国土交通大臣登録講習実施機関が実施する「監理技術者講習」を受けなければなりません。講習を受けると監理技術者講習修了履歴を記載したラベルが発行されるため、交付された資格者証に貼り付け、工事現場で携帯することがすることが義務付けられています。また、発注者から要望があったときに必ず提示する必要があります。
・資格者証の申請について
https://www.cezaidan.or.jp/managing/about/index.html
(※出展:一般財団法人建設業技術者センター)
監理技術者資格者証の有効期限
監理技術者資格者証の有効期間は、資格者証が交付された日から5年間となっています。(国土交通大臣認定者の場合は、大臣認定書の有効期限まで)資格者証がないと監理技術者として現場に配置することができません。有効期限が切れないよう、該当する期間に更新申請を行います。
まとめ:技術者の要件は建設業法にのっとって確実な管理・運用を
主任技術者と監理技術者は、建設業に欠かせない重要な資格者です。建設工事の規模をはじめ、諸条件により必要となる資格や要件が異なるため、企業は常に適正な人員を配置できるよう、建設業法にのっとった運用・管理をしていかなければなりません。
しかし法改正への対応や資格者の入退社、異動、資格の有効期間など、管理が必要な項目は多岐に渡ります。管理が煩雑で、お困りの企業の方も多いのではないでしょうか。
SKILL NOTEは、従業員の保有資格を一元管理し、資格の有効期限を自動で通知する機能も搭載しているクラウドサービスです。
エクセルなど手間のかかる方法から脱却し、システムを使って抜け漏れなく、より効率的な資格者管理ができるため、建設業の企業様にも多数導入いただいています。社内の主任技術者・監理技術者の資格管理にお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。

主任技術者・監理技術者Q&A
- 主任技術者と監理技術者の違いはなんですか?
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主任技術者・監理技術者の最も大きな違いは、関わる工事現場の規模です。下請けの契約で請負代金が一定の額(合計4,000万円/建築一式工事の場合は6,000万円)以上になる場合は、主任技術者に変えて監理技術者を工事現場に配置します。
- 主任技術者になるにはどうすればよいですか?
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主任技術者になるには、2つの方法があります。一つは、学歴に基づく要件を満たすこと。もう一つは定められた1級もしくは2級の国家資格や職業能力開発促進法で定められた技能検定、一部の民間資格を取得する方法があります。。
- 監理技術者になるにはどうすればよいですか?
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監理技術者になるには、業種ごとに定められている資格要件をクリアすることや、実際の工事現場で実務経験を重ねていることが求められます。一部の指定建設業では1級の国家資格の取得や、技術士の資格者又は国土交通大臣の認定が必要です。
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